本当に心が通じ合っていたら、 素敵なお話ですね。 きょうも ひが しずんで、 まちは しんと しずかになった。 みんなが おふとんに もぐりこむ ころ── ボクと クロの じかんが はじまる。 クロは くろい からだに、きんいろの ひとみ。 よるのなかでは すぐに まいごに なっちゃいそうなのに…… ボクは なぜか すぐに クロを みつけられるんだ。 「クロ、いくよ」 ボクが ささやくと クロは しっぽを ひとふりしてことばの かわりに こたえてくれる。 しろい つきが てらす みちを ボクらは ならんで あるいた。 クロのあしおとは ちいさくて、 ボクのこころまで そっと ふんでくる。 「きょうね、ちょっと さみしかったんだ」 ボクが ぽつりと いうと クロは なにげなく ボクの てに すりよってきた。 ……クロは、なんにも きかない。 でも、なんにも きかないで ボクのとなりに いてくれる。 それが なんだか、いちばん うれしい。 よるの こうえん、ベンチに すわって ボクは クロと そらを ながめた。 「ねぇ、クロ。つきって まるいのに、 ときどき かけたり、かくれたりするんだね。」 クロは うごかない。 でも、きっと うなずいてる── ボクには そう おもえた。 クロと ボクの よるのさんぽは ことばが なくても、 こころで おしゃべりできる たいせつな じかん。 「ただいま」って いうまえに ボクは クロに ささやいた。 「……きょうも、ありがとう。」 よるが おわって、また あさが やってくる。 でも── クロとボクの おはなしは これからも ずっと つづくんだ。
クロと ボクの よるのさんぽ