タイトル:帰り道と、花火。 登場人物 主人公(男) 彼女 彼女: ねぇ、あなたは今も、あの日を覚えてますか? 0: 雑多な足音。 仕事終わりの人々が足早に駅から流れていく。 夕焼けが少しずつ夜へと変わる帰り道。 今日も一日が終わる。 彼女: おかえり! 主人公: ……ただいま。 彼女: どうしたの?疲れてる? 主人公: まぁ、それなりに。 彼女: そかそか。 ひとまず、おうちに帰りますかぁ♪ 主人公: ……おまえなぁ。 0: 二人は並んで歩き出す。 彼女: そうだそうだ! 今度、古江見町でいつものお祭りやるんだって! 主人公: もうそんな季節か。 彼女: 一年って本当に早いよねぇ。 りんご飴食べたい! 主人公: 本気で言ってるのか。 彼女: 焼きそばも食べたいし! たこ焼きも! かき氷も! 主人公: 食いしん坊か。 彼女: 違うもーん。 お祭りを全力で楽しみたいだけ! 主人公: ほとんど食べ物じゃねぇか。 彼女: えへへ。 0: 主人公は少しだけ笑う。 その笑顔は、どこか寂しそうだった。 彼女: ……ねぇ。...その、さ、今年も、一緒に花火見よう? 主人公: ああ。…約束だ。 0: 場面転換。 祭り当日。 屋台。 笑い声。 子ども達のはしゃぐ声。 遠くで祭囃子が聞こえる。 彼女: わぁ……。やっぱりお祭りって好き。 主人公: 毎年そう言ってるな。 彼女: だって好きなんだもん。ねぇ見て!金魚すくい! 主人公: どうせ一匹も取れないだろ。 彼女: むっ。見てなさいよー?今年は取れるし! 0: その時。 知人が主人公へ声をかける。 知人(兼役可): おー!久しぶり!お前…一人で来てたの? 主人公: ……え? 0: 主人公は隣を見る。 いつの間にか彼女は少し離れた位置で笑っている。 知人には、その姿が見えていないようだった。 知人: また今度飲もうな! 0: 知人は去っていく。 彼女: 行こっか。 花火、始まっちゃう。 0: 主人公は何も言わず頷く。 0: 河川敷。 夜空。 一発目の花火が打ち上がる。 彼女: ……綺麗。 主人公: ああ。 彼女: ねぇ。ごめんね。 主人公: ……。 彼女: 約束したのに。あの日。...間に合わなかった。 主人公: ……。 彼女: ちゃんと向かってたんだよ。 急いでた。 早く会いたくて。 走って。 走って。 でも…… 行けなかった。 0: 花火の音だけが響く。 主人公: 知ってる。 彼女: ……え? 主人公: 全部知ってる。 事故だったんだろ。 あと少しだった。 あと少しで…… 会えた。 0: 彼女は静かに涙を流す。 彼女: ずっと。 謝りたかった。 約束を守れなくて。 ごめんね。 主人公: 違う。 俺は…… 怒ってなんかない。 来ようとしてくれた。 それだけで十分だった。 彼女: でも…… ずっと心残りだった。 一緒に花火を見る約束。 守れなかったから。 主人公: だから…今日なんだろ。 彼女: ……うん。 主人公: ちゃんと見られた。…今年は一緒に。 彼女: うん……! 約束…… 守れたね。 0: 最後の大きな花火が夜空いっぱいに咲く。 光が二人を照らす。 彼女: ありがとう。もう…時間みたい。 主人公: ……ああ。 彼女: さようなら。 主人公: また…… 彼女: ううん。"また"じゃないよ。ありがとう。 0: 花火が消える。 夜風が吹く。 主人公が隣を見る。 そこには、もう誰もいない。 0: 静かな夜。 祭りの賑わいだけが遠くに聞こえる。 主人公: ……約束。守れたかな。 0: 主人公は夜空を見上げ、小さく笑う。 歩き出す。 夜空には、花火の残り香だけが漂っていた。 ― 完 ―
最初の回答者になってみませんか?