自作台本より、一部抜粋です。 -- 『その口付けは、泥と魚の匂いがした。』 大水の翌日。 水底に沈んだ幼馴染は、思いの外、早く見つかった。 閉じた目。 血の気のない頬に新しく出来た深い傷は、茶色く濁った濁流に洗われて、血を流すことをやめていた。 無力感に苛まれる暇もない再会。短い時間。しかし、それは二人を永遠の遠くへ引き離してしまった。 そこに在るのに、そこにいない。 どんなに離れてしまったのか、実感ができず、確かめるようにした口付けは、泥と魚の匂いがした。
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