題名『枯れた花のように』 少しでもお気に召して頂けたら幸いに存じます。 ※アレンジ・アドリブ大歓迎です。 ≪設定登場人物≫ 主=主人公(諸外国も悩みの種だったドラゴンを斃した英雄) 店=店主(主人公行き付けの店のマスター) 兵=兵士(主人公の後輩) ※女声のチャレンジャーも求む!アレンジ・アドリブ大歓迎です。 以下、本文。  ̄ ̄ <扉が開く> 主「邪魔するよ」 店「いらっしゃいませ。おや、久しぶりですね」 主「ああ、ちょっと野暮用で、国境(くにざかい)まで出掛けていたからな。はー、つっかれた」 店「左様でしたか。それはそれは、誠にお疲れ様で御座いました。それで、今夜のご注文は?」 主「ラム酒を」 店「ラムで宜しいんですか?もっと上等な酒を飲んでも、バチは当たらないと思うんですがねぇ。なにせあなたは」 主「おいおい。このやり取りも、もう何度目だ?【一人称】は根っからのラム酒好きなんだ。客が飲みたい物を提供するのが、アンタの仕事だろう?それで良いじゃあねぇか」 店「(溜息)承知致しました」 主「分りゃ良いんだよ、分りゃ」 店「全く……、常連になって頂けるだけで十分嬉しいんですがね、いい加減【一人称②】にも、ちょっとくらい儲(もう)けさせてやろうとは思わ無いんですかねぇ?王国騎士団の団長殿は」 <一瞬ザワついた後、店内の空気が凍る> 店「はい、ラム酒です」 主「……何が“はい、ラム酒です”だ!この空気どうするつもりだ?あと、既に除隊しているんだから、ちゃんと元(もと)と付けろ!ったく……驚かせて済まなかったな。今夜の勘定は【一人称】が持つから、皆、思う存分飲んだり食べたりしてくれ」 <店内は少しずつ元の賑わいを取り戻していく> 店「……嘘をおっしゃい。今でも現役でしょう」 主「(やや小声で)嘘じゃねぇわ!後輩達を立派な騎士に育て上げ、団の未来を托し、【一人称】自身は今や、枯れた花みてぇなもんだってぇの!」 店「だが、そう思っているのはあなただけ」 主「ああ、困った事にそうらしい。【一人称】は、どこか農地を借りるか手伝いでも構わねぇから、農業したいんだがなぁ。どっしりと腰を落ち着けてよぉ」 店「ブドウ栽培がしたいのでしたっけ?」 主「ああ。あんた陽に照らされたブドウの実を見たことがあるか?赤も白も、まるで宝石の様にキラキラと輝くんだ。それだけじゃない。喰えば甘い果汁が口の中に満ち、鼻に抜けるその香気(こうき)まで最高に美味い。だから【一人称】はブドウが大好きなんだ」 店「ブドウ酒は飲まない癖に」 主「ぅるせぇ。まだ美味さがよく分かんねぇだけだ。だから自分が飲んで、美味いと思えるブドウ酒を作りてぇんだ」 店「しかし、周囲が放って置いてくれない、と」 主「ああ。頼って貰えるのは、心底嬉しいんだが……どうしたもんかねぇ」 店「戻れば良いじゃないですか」 主「あんな盛大な除隊式やって貰った手前、戻れねぇだろ」 店「では、まだまだ隠居は出来ませんねぇ」 主「(溜息)全くもって、その通りの様だ」 <店の扉が開く> 兵「失礼仕(つかまつ)ります。元団長殿は居(お)られますか!?」 主「おー。ココだ、ココだ」 兵「ぁ…!」 <元団長の姿を認めるなり近付いて来る> 兵「ご歓談中に失礼致します」 主「構わん。で、今度はどこで何があった」 兵「は!それが、今度は北の国境(こっきょう)付近の河に、クラーケンが現れまして」 主「クラーケンだと?海の魔物じゃないか」 兵「はい。そうなんですが、それが何の間違いか、河に」 主「うーん……。今夜は、確か新月だったな」 兵「はい」 主「もしかしたら奴等は、ただ闇雲に海の中を漂(ただ)っている訳では無く、月の光を頼りに方向を把握しているのかもしれない。それが、新月で方向が分らなくなり」 兵「河に迷い込んでしまった、と?」 主「あくまで憶測だがな。通常のイカは真水を嫌うものだが、魔物にその常識を当てはめてよい物か分らんし、既に河に出現している。凶暴化する可能性も否めん。迅速に対処せねばな」 兵「はい。それで、どの様な対処をすればよいのでしょう?」 主「まず光に反応すると仮定して、松明(たいまつ)をかかげた船で海へと誘導してみよう。それでダメならば、大きくて丈夫な網に入れて河口まで引っ張り、強制的にご帰還願おう」 兵「え、退治しないんですか?」 主「ああ。避けられるなら、殺生はしない限る。姿形(すがたかたち)は違えども、奴等も【一人称複数形】と同じ、神様の子供なのだから」 兵「御意」 主「つーわけで、勘定頼むわ。これで足りるか」 店「はい、十分で御座います」 主「そうか。美味かった。ご馳走さん」 店「お粗末様です」 主「ん!じゃ、いっちょ行って来るわ」 店「はい。またのご来店をお待ちしております。上等のラム酒のご用意をして」 主「ハハッ!そいつぁ、楽しみだ。それじゃ、また」 店「はい」 <扉が閉まる> 店「ご武運を」 店:いやはや、英雄様も楽じゃあ有りませんねぇ。果してあの方に、隠居出来る日は来るのでしょうか。それはまた、別のお話。このお話は、これにて終焉で御座います。ここまでお付き合い頂き、誠に有難う御座いました。それでは皆様、よい人生を。 <終> __ 本文は以上です。ご覧頂き、誠に有難う御座いました。皆様からのご投稿及びご感想を、心よりお待ち申し上げております。
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