Kazumi☂Kazumi☂2025-11-29 04:58

朗読台本:『空を泳ぐ金魚』

****************************** 気づいたのは、 風が少しだけ涼しくなった 午後だった。 僕は、 窓の外をぼんやり眺めながら、 空の向こうへと続く雲の道を 追っていた。 その時だ。 水面のきらめきのような光が、 空にふわりと浮かんだ。 目を凝らすと それは、 金魚だった。 ひらひらと尾を揺らし、 まるで水の中を進むみたいに、 青空を泳いでいた。 赤い身体は太陽の光をまとい、 ふわりくるりと宙返りするたびに、 雲が波のように揺れ動く。 僕は息を呑んだ。 どうしてここにいるのかなんて どうでも良くなるほどに、 その姿は美しかった。 やがて、金魚はゆっくりと 空の奥へと遠ざかり、 雲の向こうへと溶けていった。 残されたのは、 胸の奥にぽつりと灯った、 小さな光だけ。 ああ、もし願いが叶うなら、 もう一度だけ、会いに行きたい。 何にもとらわれず 自由に優雅に空を泳ぐ あの美しい金魚に。 *****************************

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#朗読

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