蜂乃巣ゆん蜂乃巣ゆん2026-05-30 15:48

エランダコドク。

「……とにかく、終わり」 そう言って背を向けた。 後ろから、泣き声が聞こえる。 足が止まりそうになる。 振り返れ。 今なら間に合う。 抱きしめろ。 全部話せ。 ごめんって言え。 ――でも。 できない。 幸せになってほしいから。 俺のいない未来を歩いてほしいから。 「風邪引くから」 足を止めたまま言う。 背を向けたまま。 「……早く帰れ」 そして。 歩き出した。 背中越しに。 夏実の泣き声が聞こえる。 今すぐ戻りたかった。 全部嘘だって言いたかった。 抱きしめたかった。 でも。 もう遅い。 ポケットの中で拳を握る。 爪が食い込む。 痛い。 でも。 その方が楽だった。 気づけば。 俺も泣いていた。 家まで、どう帰ったのか覚えていない。 信号を渡った記憶も。 誰とすれ違ったかも。 何も。 ただ。 胸だけが痛かった。 寒いはずなのに。 身体の感覚がなかった。 玄関の扉を開ける。 静かな部屋。 誰もいない。 「……ただいま」 返事なんて、あるわけない。 なのに。 いつもの癖で言ってしまった。 鍵を閉める。 その音が、やけに響く。 もう。 無理だった。 「っ……あぁ……」 崩れる。 玄関で、そのまま膝をついた。 「なんで……」 喉が震える。 「なんで、あんな顔させてんだよ……」 夏実の顔が離れない。 泣きそうなのを必死で堪えてた顔。 震えた声。 怒った顔。 初めて見た涙。 全部。 全部。 俺が壊した。 「ちがうだろ……」 頭を抱える。 「幸せに……なってほしかっただけだろ……」 震える声。 でも。 本当は違う。 ただ。 怖かった。 死ぬことも。 忘れられることも。 一人になることも。 全部。 怖かった。 「っ……くそ……」 目を閉じる。 浮かぶのは。 笑ってる夏実ばかりだった。 『恋人ですので』 たった数時間前の言葉なのに。 もう、遠い。 「……夏実」 会いたい。 今すぐ。 会って。 全部話して。 抱きしめて。 ごめんって言って。 もう一度、笑ってほしい。 でも。 できない。 俺がいなくなったあと。 もっと苦しむのは、夏実だから。 だから。 嫌われなきゃいけなかった。 忘れられなきゃいけなかった。 「……これで、良かったんだよな」 誰に聞くでもなく呟く。 返事はない。 あるのは。 静かな部屋だけ。 そして。 自分で選んだ孤独だけだった。

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#声劇#君への、手紙。#ゆんの台本#声劇

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