*************************** 僕は、 白い壁の前に立っていた。 一枚目。 それは幼い頃の僕が、 クレヨンを握りしめて描いた 景色だった。 空は滲んで、木々はゆがみ、 色は好き勝手に踊っている。 こんな世界が本当にあると 信じていた頃。 次の絵へ歩き出す。 2枚目に進むと、 そこには鏡が置かれていた。 説明もなく、ただ静かに 僕を映している。 見たくないときほど、 姿は鮮明だ。 描き足した嘘、 削り落とした本音、 塗りつぶした心の形が、 鏡の中で勝手に寄せ集まり、 僕の輪郭を作っている。 「これが今の僕?」 問いかけても鏡は揺れず、 ただ事実だけを映す。 最後の絵。 そこには、 真っ白なキャンバス。 何も描かれていないはずなのに 見える未来の僕。 僕は、静かに息を吸った。 たとえ色が滲んでも、 線が歪んでもいい。 これからの絵は、 僕の未来。 僕の人生。 だから僕自身が描く。 そう思った瞬間、 白い空間が ゆっくり色づきはじめた。 展覧会は、まだ終わらない。 僕の物語は、これからだ。 ******************************
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