はぐ兄はぐ兄2026-03-04 01:32

卒業式の答辞

以下台本↓ 「答辞。 ……窓の外では、誇らしげに咲き誇る桜が、 私たちの門出を祝っているかのようです。 ……という、例年通りの、 誰が書いたかも分からないテンプレートな挨拶は、 この辺で切り上げさせていただきます」 ​「振り返れば、三年前。 私たちは期待に胸を膨らませ、 この校門をくぐりました。 ……いいえ、正確には 『内申点』という名の首輪をつけられ 逆らえば将来が閉ざされるという 恐怖政治の中に放り込まれたのです」 ​「先生方はおっしゃいました。『個性は大切だ』と。 しかし、実際はどうだったでしょうか。 靴下の色は白、髪の毛は耳にかからない、 スカートの丈は膝下。 私たちが学んだのは、学問ではなく 『いかに個性を削ぎ落とし、 社会という名の歯車にハマりやすい形に 自分を加工するか』という、高度な加工技術でした」 ​「部活動も素晴らしい思い出です。 炎天下、科学的根拠のない根性論で喉を枯らし、 サービス残業ならぬ 『サービス練習』に明け暮れたあの日々。 おかげさまで、ブラック企業に就職しても 『あ、これ部活よりマシだな』と思える 屈強な奴隷精神が養われました。 感謝の言葉もございません」 ​「そして、ここにいる保護者の皆様。 ……毎朝、死んだ魚のような目で 満員電車に揺られる皆様の背中を見て 私たちは確信しました。 『大人になんて、絶対になりたくない』と。 しかし、無情にも時間は過ぎ、 私たちは今日、その地獄への片道切符を渡されます」 ​「校長先生。 あなたが全校集会で語った、 三十回中二十八回は使い回されていたあのお話。 ……あれをBGMに、いかにバレずに 睡魔と戦うかというスキルは、 今後の人生で会議を乗り切る大きな武器となるでしょう」 ​ 「……いよいよ、お別れの時です。 住み慣れたこの檻を、私たちは去ります。 外の世界は、自由という名の 自己責任が渦巻く荒野だそうです。 でも大丈夫。 私たちはこの三年間で、 『中身のない言葉を並べてその場を凌ぐ術』を 完璧にマスターしました。 今日のこの答辞が、その最高の証明です」 ​「最後になりますが、 私たちのことなど一週間後には忘れるであろう 在校生の皆さん。 ……次は君たちの番です。 せいぜい、バレないようにうまくやりなさい」 ​「令和八年、三月。 卒業生代表……監獄の囚人番号、三〇二番。 「あなたの名前」」

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