ここから先は通行止めだ

【説明】 拝啓 陸奥様。 お題(台本)でご挨拶を頂きましたら、お題(台本)で返事を返すのが書き手の礼儀(?)。 という事で、陸奥様作の「密会」と同じ世界線(?)にて台本を書かせて頂きました事を、この場を借りて──ごめんなさい!!! クールなハードボイルドな感じで書いていらっしゃるのに、コメディで書いてごめんなさい!!! 敬 具 といった台本となっております。 皆様もお気軽にお楽しみ頂ければ幸いです。 ****************** 「よう、お嬢さん♪ そんなに急いで何処に行くんだ? 残念だが、ここから先は通行止めだ。 すまないな。私も雇われの身なんだ。君をここで逃がしたとあっちゃあ、おマンマを食いっぱぐれちまう。 入り組んだ路地に入ってしまえば、上手く逃げれると思っていたんだろうけど──あいにく、逃げる子猫を捕まえるのは得意なもんでね。 ──おぉっと、無理矢理通り抜けようなんて考えない事だ。 私への依頼は『君を保護する事』……だが『無傷で』とは言われていない。しかし……逃げる女の子を後ろから傷付けるなんてのは、私の性に合わない。出来るだけ避けたいところでもある。 だからお願いだ……私に君を傷つけせるな。 ん〜、良い子だ♪ さて、最終確認だ。 人口庭園で栽培された花から、猛毒を抽出する方法が記されたデータ──そのデータが入ったUSBを君が持っている……間違いはないかい? おいおい、今さらそんな誤魔化しが通用すると、本気で思っているのか? 言っただろ? 私は『君を保護しろ』と依頼されたんだ。 そのデータが目的なら、とっくに君の頭に鉛の弾をぶち込んで、動かなくなった君の身体からUSBを探し出し、とっととこの場から立ち去っている──違うかい? (呆れたように) ん〜、それでも『知らない』……そうかい、あぁ分かった。知らないなら仕方がない。 だがそれを聞いて『あぁそうですか』と見逃すなんて事、素人でもやらないだろう。 君を保護してギャラを貰わないと、来週、娘のバースデーに、生クリームも乗っていないお粗末なケーキを、家族で一緒に食べなくてはいけなくなってしまう。当然メッセージの書いたチョコプレートも無しだ。 ──あぁ分かった。そこまで言うなら一応確認しよう。 ちゃんとメモは残してあるんだ。依頼を忘れない様にな。ほらこの通り♪ ──良いかい? 『小柄な身長』『黒髪のアジア人』ん〜、間違いなく君だ♪ そして『ブルーのシャツ』に『ベージュのパンツ』を履いた『ご老人』──ご老人? え、あ、あれ? ごろう……え? あ、あぁ〜……女性にこんな事を尋ねるのは、大変失礼なのは承知しているんだが……あ〜その……年齢をお聞しても── あぁ……うん。見た目通りの年齢──搾りたてのフルーツジュースの様な、フレッシュで瑞々(みずみず)しさがある。 あぁそうだっ! 君は変装の名人で──も無いか。そんな情報は書かれていない。 うん……急いでいた所、呼び止めてすまなかった。私の人違いだった様だ。 え? あ……あぁ、どうぞ……道中お気を付けてぇ〜…… (ため息) 老人……え、老人? え〜……あれ? どこ……行った?」