蜂乃巣ゆん蜂乃巣ゆん2026-05-21 14:59

未来と、君と。

この世に何かを生み出すことは痛みが伴うものだと思って生きてきた 時間や自分の中の何かを削り取ってようやく生み出せるような感覚 物書きを始めた頃はそんな事を考えもしてなかったと思い出したんだ ○「いらっしゃいませ、こんにちは」 ●「あの……これ」 ○「え、それって……」 ●「この前、話してたやつです。 気に入るかわからないですけど……」 ○「……!」 彼女は表紙を見るなり、目を丸くした。 ○「短編……本当に持ってきてくれたんですね」 ●「あ、はい……その」 ○「ありがとうございます。 ずっと楽しみにしてました」 少しだけ、間が空く。 ●「あの……あと」 ○「はい?」 ●「これ、僕が書いたやつなんです」 ○「……はい?」 ●「…夢月類。 僕のペンネームなんです」 彼女は少しだけ黙って。 それから、困ったように笑った。 ○「……やっと言ってくれた」 ●「え?」 ○「私、知ってましたから」 ●「えっと……名乗りましたっけ、僕」 ○「サイン会、何度も行ってたんですよ?」 その瞬間、ぼんやり記憶が繋がる。 本を抱えて、少し後ろで待っていた女の子。 ○「だから、新作。ずっと待ってました」 ●「……」 ○「それに」 原稿を抱えながら、小さく笑う。 ○「“終わった作家”なんて、私は一度も思ったことないです」 胸の奥で、何かがほどける音がした。 書けなくなったんじゃない。 怖かっただけなのかもしれない。 ●「あの……」 ○「はい?」 ●「その短編とは別に、もう一つ入ってます」 ○「もう一つ?」 ●「……あなたのことを書いた話です」 ○「……え?」 ●「驚くくらい、筆が進んだので」 彼女が少しだけ俯く。 それから、小さく笑った。 ○「私、ずっと――」 言い淀んで、 ○「ずっと前から、月が綺麗だと思ってましたよ」 ●「……それって、つまり」 ○「そういうことです」

87
#朗読#朗読#ゆんの台本#声劇

回答一覧0

まだ回答がありません

最初の回答者になってみませんか?