朗読台本「ヤマアラシ(ﾊﾘﾈｽﾞﾐ)のジレンマ」

﹌﹌﹌﹌﹌﹌﹌﹌﹌﹌﹌﹌﹌﹌﹌﹌﹌﹌ 静かな夜だった。 音のない冷たさが 心の隙間に入り込んでくる。 ぼくは思い出す。 ある哲学者の寓話に出てくる あの二匹のヤマアラシを。 寄り添えば刺さり 離れれば凍える。 それでも少しずつ探りながら 痛みのない距離を見つけていく。 アメリカの精神分析医が それを"人の心の物語"に置き換えた。 近づきたいのに傷つけてしまう。 離れたくないのに触れられない。 まるで人間関係の葛藤そのものだと。 ぼくは思う。 優しさとは距離を測りながら 生まれる理解のこと。 沈黙も心が寄り添おうとする 音かもしれない。 もどかしい気持ちを乗り越えた ヤマアラシに負けないように ぼくも君との適度な距離を探す。 そうして見つけた 心地よい距離を これからもずっと大切にして 生きていこう。 ﹌﹌﹌﹌﹌﹌﹌﹌﹌﹌﹌﹌﹌﹌﹌﹌﹌﹌﹌﹌ 参考:『ヤマアラシ(ﾊﾘﾈｽﾞﾐ)のジレンマ』 【寓話】 アルトゥール・ショーペンハウアー (哲学者:ドイツ) 【命名】 レオポルド・ベラック (精神分析医:アメリカ) ﹌﹌﹌﹌﹌﹌﹌﹌﹌﹌﹌﹌﹌﹌﹌﹌﹌﹌﹌﹌