SE:静かなオフィス。規則的なタイピング音。遠くで鳴る電話。 山田: 「まったく。」 「何故こうも人間というものは、 与えられた時間を使い切らずに 幕を閉じようとするのか……」 「こちらにも、 こちら側の予定というものがある。」 「魂の抜去率に対して 再生率が追いついていないと、 上からも小言を言われる。」 SE:紙をめくる音。 山田: 「慢性的な不足だ。」 「“命”というものは、 お前たちが思うほど 自由なものではない。」 「回収し、 分解し、 再配分する。」 「循環だ。」 「本来であれば、 過不足なく回るよう 精密に組まれている。」 「長すぎず、 短すぎず。」 「誰かが終われば、 誰かが始まる。」 「そういうふうに、 出来ている。」 「……だが。」 「人間というのは、 どうにも予定を守らない。」 SE:電話が鳴る。 山田: 「……はい。」 「ライフロジスティクス第三回収課、 山田です。」 「えぇ、確認しております。」 「対象者番号、 A-1138。」 SE:キーボードを叩く音。 山田: 「はい。 寿命満了まで、 残り三十七年。」 「ですので、 現時点での回収予定は――」 (少し間) 「……あぁ。」 「いえ、 事情は理解しております。」 「ですが困ります。」 「こちらも、 資源循環の工程がありますので。」 「前倒しが続くと、 次の配分に遅れが出る。」 「はい。」 「はい。」 「お気持ちは、 理解しております。」 「ただ――」 「返却時期は、 そちらの判断ではありません。」 SE:短い沈黙。 山田: 「えぇ。」 「命は、 確かにあなたのものです。」 「ですが。」 「所有権と、 回収権は別ですので。」 SE:静かに受話器を置く。 山田: 「……まったく。」 「契約内容を、 読まない客が多すぎる。」 SE:また別の電話が鳴る。 山田: 「はい。」 「ライフロジスティクス第三回収課、 山田です。」 「――え?」 (小さくため息) 「また予定外ですか。」
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