・お題第3作目です。 単語や設定等をアレコレ考えたりするのは好きなほうで、『なさそうでありそう』のラインを捉えたいです(笑) 男性でも女性でも可。よろしければ、皆さんの命をふきこんでみてください。 以下、本文です。 --------------- シュロの月 ユトナの刻(今でいう何月何日を意味する) 故郷のアーレンを発って数日。 平原はガラリと姿を変え、目の前には広大な砂漠が広がっている。大陸中央、ナガン砂漠に入ったのだ。 あれだけ慣れ親しんだ翠が、既に懐かしいと思えるくらいには、何もかもが様変わりしている。 場所が変われば人が変わる。人が変われば文化も変わる。文化が変われば思想も変わる。 ナガンの民は、独自の信仰を持っている。これまでの常識を覆して、一からの生活に身を置くのは勇気が要る。しかし、それが楽しいとも思える。旅の醍醐味と言えるだろう。 砂漠の夜は、想像以上に冷える。闇は全てを吸い込み、骨身に染み渡る静寂が辺りを支配している。 さながら、灼熱の大地から死者の国へ足を踏み入れたかのようだ。 はじめは心細かった。正直に認めよう。自分は案外怖がりなのだと気づいた時は、思わず笑ってしまった。 今はどうか。これまた意外なもので、悪くないと思っている自分がいる。遥か頭上に瞬く星々を独り占めできるからだ。 キリク、アネル、ルーチェ、ニルギ、メイナ…こんなにも多くの星団と邂逅できるとは。なんとも贅沢な気分だ。 大の字に身を投げ出し、無数の星を眺める。自分を中心に、大小様々な煌めきが絶えず廻っている。 この瞬間だけは、世界と、自分と。 余計なもの一切を排除して、一つに融け合っていく。そう思えた。 -終-
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