(玄関の扉が勢いよく開く) 執事:お帰りなさいませ、お嬢様。 ……おや。足音が荒いですね。 その勢いですと、本日は玄関マットに八つ当たりをなさるご予定でしょうか? お嬢様:うるさいわね! 聞いてちょうだい! 執事:えぇ、もちろん。 本日の愚痴も、紅茶と共にお受けいたします。 お嬢様:今日、学園で笑われたのよ! 執事:ほう。 また授業中に居眠りでも? お嬢様:違うわ! “えすえぬえす”が分からないって言ったら笑われたの! (少し間) 執事:……あぁ。 なるほど。 それは確かに、現代では少々珍しいですね。 お嬢様:少々って何よ! 執事:ご安心ください。 “スマートフォンを電話専用機として使っておられる方”も、絶滅危惧種ながら存在いたします。 お嬢様:わたくし、絶滅危惧種なの!? 執事:天然記念物寄りでございます。 お嬢様:嫌すぎるわ! 執事:ですが、お嬢様。 知らぬことを笑う方々に、そこまでお気を悪くする必要はございません。 お嬢様:……でも、なんか悔しいじゃない。 執事: では覚えましょう。 悔しさは、知識で殴り返すのが上品でございます。 お嬢様:言い方が物騒なのよ。 執事:失礼。 “優雅に見返す”でございました。 (ティーカップを置く音を想像する間) 執事:まず、“えすえぬえす”とは。 簡単に申しますと―― 「今日の昼ご飯はこちら!」 「眠い」 「なんだか悲しい」 「猫がかわいい」 そういったものを全世界へ放流する場所でございます。 お嬢様:そんな日記みたいなものなの? 執事:えぇ。 ただし時に、戦場にもなります。 お嬢様:怖っ。 執事:ゆえに大切なのは、距離感でございます。 便利ですが、振り回されすぎてはいけません。 お嬢様:……執事のくせに、たまには良いこと言うのね。 執事:“たまに”は余計でございます。 お嬢様:じゃあ、わたくしも始めようかしら。 執事:おすすめはいたしますが―― どうか勢いで、「執事が腹立つ」など投稿なさらぬよう。 お嬢様:え、ダメなの? 執事:その場合、わたくしも返信いたします。 『本日もお嬢様は元気で何よりです』と。 お嬢様:絶対笑われるじゃない! 執事:えぇ。 主従漫才として。 (少し間) 執事:さて、お嬢様。 本日の勉強会を始めましょう。 まずは“アカウント作成”からです。 お嬢様:あか……うんと? 執事:……前途多難でございますね。
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