***************************** 子どもの頃、 僕の家には煙突がなかった。 それが、ほんのちょっと悲しかった。 僕は サンタクロースを信じていたから。 サンタさんは、 煙突を通って皆の部屋を訪れ プレゼントを配る。 絵本に描かれたサンタさんが、 煙突から忍び込んでくる姿を 何度も頭の中でなぞった。 煙突のない僕の家に サンタさんはどうやって 入るのだろう。 窓か玄関か、 それなら鍵を開けておかなきゃ。 それとも、 壁をすり抜けるのだろうか。 布団にくるまりながら、 そんなことばかり考えていた。 それでも毎年、 目を覚ませば枕元には 小さな包みが置いてあった。 色とりどりの紙、 丁寧に結ばれたリボン。 そのぬくもりに触れるたび、 「煙突がなくても来てくれたんだ」 と胸が温かくなった。 想いは届く。 そう信じたまま 大人になった。 そんな僕は今 子どもの頃に憧れていた あの絵本のような 煙突のある家で過ごしている。 子どもたちが 安心して眠り、 心躍る朝を迎えられるように。 そして、 あの時のサンタさんが 僕の家を見つけやすいように。 *****************************
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