誰もいない町を走る。 過ぎていく街の街頭、静まり返った町。 僕の走る足音だけが、僕の存在を証明するように街にこだましている。 目的地はない、ただあの場所にいたくなかった。 耳鳴りのような声がまだ耳に残っている、それをかき消すように跳ねる心臓の音を聞いていた。 「どうした、少年」 ふいに声がした、思わずあたりを見渡す。 発言主はタバコを吸っている、けだるそうな人だった。 息が詰まりながらも、必死に言い訳を考える。 「あの……ぼくは、ただ……」 そんな僕を彼女はただ優しい目で見つめていた。 ふいに持っていたたばこを消して…… 「食うか?おなかすいてるだろ?」 ごそごそと袋からカップラーメンを取り出して、手招きをした。 僕は誰かに会えたのがうれしくて、ただうなずいた。 「ごめんなー散らかってて」 「いえ、そんな」 「そこは否定しろー」 にししと笑う彼女は、とても素敵だった。 「さあ!まずは食いな」 差し出されたカップラーメンを僕はすすった。 「……うまい」 「っかああ。だろ、深夜に食うラーメンはうめーよなあ」 「……いえ、ただ誰かと食べるご飯がおいしくて」 「……」 僕はラーメンをすすった、流れる涙もぬぐわずに。 それを彼女は何も言わずにただ見つめていた。 「ごちそうさまでした」 「おう、……そうだ」 何を思ったのかふいに近いて、わしゃわしゃと僕の頭を撫でた。 「何かあったらここに来な、またラーメン用意しておくから」 また、また来ていいの?……そっかまた来ていいんだ。 「うん、またお邪魔しますお姉さん!」 「そんな固くなくて良いっての」 「……うん、またねお姉さん」 「ああ、またな」
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