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レイ 🐾レイ 🐾2025-08-06 21:29

ひと夏の花

あの夏の日、 強い日差しの中で咲いていたのは、一輪の向日葵だった。 風に揺れて、光を浴びて、それでもまっすぐに空を見上げていた。 まるで――迷いも、ためらいも、何ひとつ知らないように。 ただ、咲く。 ただ、そこに立ち続ける。 誰かに見てほしいわけじゃなく、 誰かに褒められたいわけでもなく、 咲ける場所で、咲けるだけ咲く。 その姿に、なぜか心が動いた。 何も言わずに咲いている花が、 どこか、自分を映しているようで。 暑さに負けて、疲れた顔をしていたかもしれない。 うまくいかない日々に、投げ出したくなっていたかもしれない。 それでも、花は咲いていた。 たったひとりの誰かが、ふと足を止めてくれる、その瞬間のために。 あのときの花の姿を、今でも思い出す。 きっと、どこにでもある夏の風景。 でも――心に残る景色って、案外そんなささやかなものなのかもしれない。 誰かの記憶に咲くために、今日もどこかで花は揺れている。 名前も知らないまま、夏の終わりに溶けていく花たち。 その一瞬の輝きが、 誰かの“今”を、そっと救っているのかもしれない。 ……今年の夏も、またきっと、どこかで。 名前のない花が、誰かの心に咲いている。

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#朗読#

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