あの夜、弟は涙ながらに眠りについた。 家に居たのは、私とこの子の二人だけ。 去っていくお父さんの背中を、お母さんは追いかけていった。 小さな私は、お父さんにいてほしくて、一生懸命いい子になろうって頑張ってたの。 でもね、もう、あの人と一緒にいるために頑張らなくていいんだって安心しちゃった。 そんな自分が怖くなって弟を抱きしめる。 「ごめんなさい」 いい子にできなかったから、こんなことが起きたんだって、心の中で自分を責めてた。 だけど、抱きしめてくれた弟。 「だいじょうぶだよ」と言ってくれた優しい声。 それが、私の心を柔らかく包みこんでくれた。 「なんて優しい子なんだろう。」 この子はこんなに純粋に、心配してくれている。その優しさが少し切ない。 まだ甘えたい盛りのはずなのに、慰めさせちゃってごめんね。 時が経ち、ブカブカの制服に手を通す。 あの子は、覚えていないかもしれないけれど、あの暖かさを一生かけて返していく。 誰にも言わないけれど、私は胸の奥で誓った。
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