登場人物:ぼく(先輩) 形式:一人語り/朗読用台本 「幻想」「距離」用意しました。 ----------------------------------- 「結晶世界:幻想」 掌に残る温度は、 砕けたマテリアルの結晶みたいに、 微光を散らしては、静かに消えていく。 君の存在は、すぐそばにあるのに、 その気配は水面を渡る光のようで、 手を伸ばせば、波紋だけがゆらりと広がる。 夜は透きとおり、 月の裏側から落ちる影が 空気ごと凍らせていく。 触れられない透明さは、 痛みよりも美しく、 ぼくを淡い眠りへと誘う。 ・・・・・・・・・・・・・・・・ 「結晶世界:距離」 掌に残る熱は、 砕け散ったマテリアルの破片みたいに、 壊れながらも、まだ消えない。 君の気配はすぐそばにある。 それなのに、触れようとすれば、 指先の前で揺れて届かない。 沈黙がひとつ挟まって、 そのわずかな距離が胸の奥で揺れる。 月の裏側に沈む静けさを思う。 誰も届かない闇の奥に、 君の存在を探してしまう。 冷たいはずの夜に、 どうしてこんなにも君が温かいんだろう。 それを失くすことが怖くて。 ぼくはただ、 声にならない祈りを抱きしめている。 ------------------------------------
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