お題詳細

陸奥陸奥2025-09-17 12:56

いつかの夢幻

いつも遊んでいただきありがとうございます。 お題第6作目です。 自分自身、どちらかというと舞台畑の人間だったので、一人語りやモノローグ、ひいては朗読が好きなのですが、こうやって『文字にする』というのは、なんとも楽しいですね。 よろしければ、皆様の命をふきこんでみてください。以下、本文です。 (自己満足バリバリですが、イメージBGMとしては、みんな大好きしゃろう様の『神隠しの真相』です。) --------------- 辿り辿って、潜り潜って、果てに着くのはいつもこの光景だった。 聞くところによると、記憶も曖昧なほど幼い時分に、雨上がりの日には決まって一人でフラフラ外出していたらしい。 どう頑張っても詳細をよみがえらせることはできなかったのに、この靄(もや)と神秘的な風景、不思議な大樹、そして『誰かの声』の記憶だけは、はっきり残っている。 何故、これだけを覚えているのだろうか。 両親や昔からの知人に尋ねたこともあったが、そんな場所は知らないとしか返ってこなかった。 先日の台風がようやく過ぎ去り、外に出た瞬間に感じた、湿ったアスファルトの匂い。水気をたっぷり含んだ土の匂い。風に乗って鼻腔の奥をなでていく雨上がりの匂いが、遠い昔を呼び起こしていた。 『わすれないで、いのちを』 あの時の声は、しっかりと耳に残っている。 たとえ夢の中の出来事だったとしても、子供ながらに見た幻か何かだったとしても。 理解していなくとも、自分にとって確かな『真実』として、内に在る。それでいい。 いつか見たそれに、もう一度逢える日がくることを、ささやかな喜びとして刻んでおこう。 -終-

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#朗読#モノローグ#女性#男性

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