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TSUYURITSUYURI2025-09-01 12:19

散華

 『今日という日を』『思い出を抱いて』を書く前日(2021年8月8日)に書いた物です。  日本ではWW2の終戦日は1945年8月15日ですが、アメリカなどでは、日本が戦艦ミズーリ号上で降伏文書に調印した日、同年9月2日が終戦日(V-J Day=Victory over Japan Day)なのです(ちなみに、中国などでは9月3日です)。    少しでも何か考えて頂けたら、幸いに存じます。  ※アレンジ・アドリブ大歓迎です。 以下、本文。  今後、幾度(いくたび)夜を越えようと、【二人称】が居ないという事実が、音も無く、無情に積み重なってゆくだけ……。    大切な人の死を、『立派な戦死』と表現して片付けられた悲しみを、苦しみを、痛みを、憎しみを、怨みを、一体どこへ追い遣(や)ればよいのか。    小さな白木(しらき)の箱に、石ころを三つ詰めた位にして、これでどうやってあの人の死を承知しろと、受け入れろと言うのか。    この胸に空いた大きな穴を、何で埋めろと言うのか。    この魂の底から湧いてくる怒りを、どう昇華(しょうか)しろと言うのか。  身体がバラバラになりそうだ。    あんな、小さな虫の一匹も殺せないような人に、鉄砲を持たせておいて……。   「人殺し!」    気が付いたら、そう叫んでしまっていた。   「言い過ぎてしまった……」    夫の戦死を伝えに来た将校さんは、何度も何度も畳に頭を擦(こす)りつけるようにして謝って、帰る前にも深々と頭を下げて行った。  次の家でもまた、ああして謝るのだろうなと思うと、胸がきりりと痛んだ。    伝える方(ほう)も、つらいのだ。    【一人称複数形】遺族の前で、決して泣くまいと、涙を堪えるために固く握り締めた拳(こぶし)の爪が、掌(てのひら)に食い込み、皮膚を破り、流れ落ちた血が、彼のズボンに染み付いていた……。    【一人称】は、蝉時雨の中、将校さんの姿が見えなくなるまで、見送った。 本文は以上です。ご覧頂き誠に有難う御座いました。

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#シチュエーションボイス#シリアス#セリフ#モノローグ#女声向け

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