Kazumi☂Kazumi☂2025-12-01 09:45

朗読台本:『花飾りとブランコ』

***************************** ブランコがゆっくり揺れるたび、 胸の奥にしまっていた記憶が 花びらみたいにほどけていく。 誰もいない公園で、 私だけが空を蹴り上げ、 風を割って進む。 髪に絡んだ花飾りは、 いつつけたのか思い出せない。 けれど、 揺れるたびに香りが強くなって、 まるで誰かがそっと背中に 手を添えているみたいだ。 地面が遠のく瞬間、 世界がふっと透ける。 薄いヴェールをめくるように、 過去と未来が 同じ光の中で揺れている。 あの頃の私も、これからの私も、 ブランコの軌道のどこかで 静かに微笑んでいる。 最高の高さまで登ったとき、 花飾りがひとつだけ空に落ちて、 ゆっくりと光りながら 沈んでいった。 その光を追いかけられたら、 私はどこまで行けただろう。 着地の瞬間、 世界はまたひとつの静けさに戻る。 でも、 髪に残った花の香りだけが、 まだ続きの物語を知っている。 ******************************

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#朗読

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