Fam'Space ~Dear Neverland~ 男×1、性別不問×1 の二人掛け合い台本です。 文字数の関係で2投稿に分けております。悪しからず… 登場人物 ピーター:中年男性。いわゆる仕事人間。それも、家庭を顧みないほどの。 ファム:年齢不詳、性別不詳。現代では考えられないほどのテクノロジーを駆使する。感情の起伏が見られず、不愛想に見えるが… 以下台本です。 --------------------------------------------- ファム:そう。あなたは、夢と希望を抱き、童心をそのままに、この世界に降り立った。 ファム:愛する人と、一生涯を約束し、二人の結晶を築き上げた。 ファム:だが、初志を貫徹するのは、難しい。あなたは、徐々に、この世界の理に、飲み込まれていった。 ファム:我が子に、愛情を注ぐため、良い教育をするためと、理由付けをし、仕事の虫となった。 ファム:社会的な地位も持ち、家庭を顧みることもなくなった。時には無慈悲と思わるほどに。 ファム:いつしか、それが慢心となり、あなたは童心を失った。 ピーター:…孤児院に入るきっかけを思い出して、両親が恋しくなった。 ピーター:ネバーランドを抜け出し会いに行った時、両親が自分ではない子供と笑顔でテーブルを囲んでいた…。 ピーター:悲しい記憶が多すぎて、やっと手に入れた輝きを手放したくなかったんだ。 ピーター:大人になりたくないと願い、最愛の人と一緒にいたいと願い、その人との結晶を育みたいと願った。 ピーター:私の名前と同様に、それらがいつしか消えていくのではないかという恐怖が常に心にあった。 ピーター:それを仕事という枷をすることによって紛らわせた。 ファム:仕事という枷により、身動きが取れなくなり、どこにも、視線を向けることが、出来なくなった、と。 ピーター:ああ。次第に枷は鎖で繋がれ、それが当たり前の状態になった。 ピーター:妻の誕生日や結婚記念日などは全て忘れて。感謝祭、クリスマスなどのお祝い事もパス。 ピーター:子供の発表会などの行事にも仕事を理由に不参加を決め込み、成長にも無関心。 ピーター:そのくせ役員会議や同僚との食事会のセッティングは進んで引き受ける。 ピーター:…こんな父親、誰が欲しい? ファム:ピーター・フェイディング。あなたは、何を望む? ファム:幸いなことに、まだ奥さまやお子さまは、あなたのことを、必要とし、求めている。 ピーター:…なん、だと? ピーター:なぜ君にそんなことが言い切れる? ピーター:これほどまでに仕事優先で、家庭のことなど一切顧みなかった私を妻が…いや、家族が到底許してくれるとは… ファム:ピーター、今日が、何の日か、知っているかな? ピーター:今日? ピーター:…はッ!今日は…俺の、誕生日? ファム:そのようですね。 ファム:ちょっと、失礼。 (ファム、壁にピーターの家の映像を投影する) ピーター:これはっ!? ファム:あなたの家の、現在の様子です。 ファム:疎まれている、父親の為に、大きなケーキや、あなたの好物であるタンドリーチキンを、ダイニングに用意するものですかね? ピーター:それは…そうだが。 ファム:それに、あの顔。あなたの帰りを、心待ちにしているように、見受けられますが? ピーター:…俺は毎年自分の誕生日に家に寄り付いた記憶はないが、まさか! ファム:ええ。毎年あなたの奥さまは、されていたようですよ。いつ、あなたが帰ってきても、良いように。 ピーター:なんで、私みたいなやつの為に、そこまで… ファム:…情。ですかね?あなたが、感じていたように、奥さまもまた、感じているのですよ。 ファム:ただ、「まだ」と、枕詞はつけておきます。 ピーター:「まだ」…か。そうだよな…。なあファム。私は、まだ間に合うのかな? ファム:ええ。十分に、引き返せる。とファムは思います。 ピーター:ファム。君は私に、「何を望む?」と問うたな。 ファム:ええ。 ピーター:…私は、童心を取り戻したい。 ファム:童心を? ピーター:ああ。あの頃の夢と希望にあふれた童心のまま、妻と出会った時のときめき、我が子が生まれたときの感動をもってして、家族とふれあいたい。 ファム:…簡単なことでは? ピーター:どうせこう言うんだろ?今抱えているものを全て投げ出して枷を外してしまえ、と。 ファム:何も、そこまで極端に、考えなくてもいいのでは? ファム:あなたは、妖精の粉とイメージで、空を飛び、どんなものも作り上げてきた。 ファム:生憎、この世界に、妖精の粉はないですが、あなたの頭の中には、イマジナリィはまだ存在しているはず。 ピーター:イマジナリィ… ファム:ええ。想像によって、物を作り出す力。確かに、物理的なものを作り出す、というのは、この世界では叶わないかもしれません。 ファム:ですが、あなたの頭の中で、イメージすることは、容易なのでは? ファム:イマジナリィによって、あなたを縛り付けてる枷を、鎖を、綿毛にしてみては? ピーター:イメージで…綿毛に? ファム:ええ。綿毛でも、羽毛でも。そんなに重く、難しく考えず、割り切る。家庭は家庭。仕事は仕事。 ピーター:なんでだろ、ファムに言葉をかけられて、頭の中でイメージを膨らませたら、本当に肩の荷が下りた気がするよ。 ファム:いえ、さきほども言った通り、それはあなたが、元々備えていた力です。 ピーター:そうだとしても、これを思い出させて引き出してくれたのは紛れもない、ファムだ。 ピーター:ありがとう、ファム。恩に着るよ。 ファム:その5文字を投げかける相手を、お間違えでは? ピーター:ああ、そのようだ。だがな、ファム。君にも間違いなく感謝している。 ピーター:そして、ファムのお言葉に甘えて家に帰ってチキンとケーキを食べながら、妻と子供に今までの謝罪と沢山の感謝を伝えさせてもらうよ。 ファム:その調子ですよピーター。最後にあなたに、黄金色に輝く、最果ての国の、「ことわざ」を贈りましょう。 ピーター:コトワザ? ファム:ええ。「継続は、力なり」。今、あなたが抱いた、その感情を、一瞬の炎により、燃やし切ることなかれ。 ピーター:ああ。肝に銘じるよ。常に情を持って、家庭を一番に考えるさ。 ピーター:…でも、さすがにあの時空を飛んでいた感覚は、思い出すだけでも爽快だな。 ファム:いや、あなたが童心を、取り戻せたなら、飛んでいけるでしょう。 ファム:…どこにでも。どこまでも。 ピーター:こんないい歳の人間が童心を取り戻したところで、人生の残り何てたかが知れているさ… ファム:いや、今、イメージの中で、空を飛んでいる、その瞬間が、人生そのものですよ。 ピーター:ああ。そうだな。 ピーター:…えらく世話になってしまったなファム。 ファム:いえ、ファムも、有意義な時を、過ごさせていただきました。 ピーター:でも、ファムはなぜ俺の過去を見透かすことができたんだ? ファム:ファーマリア・オルテムス。またの名を、時の番人。またの機会に、お会いしましょう。 (SE扉の閉まる音)
最初の回答者になってみませんか?