空を飛びたかった。 窓から見える、四角い空。 空はどんなところなんだろう。 踊るように空を舞う鳥や蝶が羨ましかった。 どこまでも自由で、美しい。 いいなぁ、いいなぁ。 起き上がろうと力を入れる。 体が重い。背中になにかが張り付いてるみたいだ。 空を旋回する白い鳥に手を伸ばしながら、思った。 きっとあの高さには、 埃ひとつない世界が広がってるに違いない。 『いきたい』 ベッドの上で ゆっくりと腕を広げる。 点滴のチューブが 宙づりの操り糸みたいに ゆらゆら揺れる。 ふと、体が軽くなった。 すごく、すごく軽い。羽みたいに!すごい、すごいや! 今なら飛べる気もしてきた! ふと風に髪を撫でられる。 窓の外の空が、濡れたラムネ瓶みたいに艶めいていた。 窓枠に足をかける あの小鳥みたいに、 ふわりと 枠を越えていく。 下で泣いている お母さんの声が、 だんだん 風の音に 変わっていく。 空は思っていたよりずっと あたたかかった。 透き通っていて、 どこまでも柔らかくて、 ──あぁ、ああ!自由だ。 ________________________________________ 「空を飛びたかった子どもの話」 【簡単な解説】(参考になれば幸いですが、読まなくても大丈夫です) 子どもは病人だった。子どもの病気は重く、ベッドから出られない生活が続いていた。そんな子どもの唯一の『外』は、窓から見える空だった。 体が軽くなった⇛子どもが死んで魂になった。魂だけになった子どもは、ずっと憧れていた空へ飛び立った。 途中の『いきたい』というセリフに込められた意味は一応二つあります。 『行きたい』⇛純粋な空への憧れ 『逝きたい』⇛長引く治療への精神の限界 大まかな説明は以上です。あとはご自由に解釈してもらって大丈夫です。 初投稿です。 もし、こえみーでの暗黙のルールや利用マナーなどに引っかかっているものがあれば教えていただけるとありがたいです。 ずいぶんと長い原稿になってしまいましたが、やっていただけたら嬉しいです。
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