AI-ァィ-AI-ァィ-2026-03-03 23:08

「犯人は」

きのうの夜、 事件が起きました。 冷蔵庫のプリンが、消えました。 あの、 一番奥に隠しておいた、 「あとで食べるから絶対さわるな」と ふせんまで貼っておいた、 あのプリンです。 容疑者は三人。 まず、母。 「知らないわよ」と言いながら、 スプーンを洗っていました。 次に、父。 「甘いものは控えている」と言いながら、 なぜか満足そうな顔をしていました。 そして、妹。 「ダイエット中なんだけど」と言いながら、 なぜか口の端に、黄色い何かを つけていました。 状況証拠は、十分。 これは、家庭内サスペンス。 ぼくは名探偵になります。 冷蔵庫の前に立ち、 深呼吸をひとつ。 犯人は―― 母だ。 いや、待て。 父の可能性もある。 いやいや、 口元の証拠からして妹が怪しい。 ぼくは三人をリビングに集めました。 「正直に言ってください。  プリンを食べたのは誰ですか」 沈黙。 重たい空気。 時計の秒針だけが、 やけに大きく響きます。 そのとき、母が言いました。 「……あなたでしょう?」 父もうなずきます。 妹も言いました。 「うん、お兄ちゃんだよ」 ぼくは笑いました。 「何を言ってるんだ。  ぼくは昨日の夜、確かに――」 ……。 ……あ。 思い出しました。 昨日の夜。 「これは明日の自分へのご褒美」 と言いながら、 ぼくは、 自分で、 食べました。 しかも、 証拠隠滅のために、 ゴミも全部まとめて出しました。 完全犯罪。 犯人は―― ぼくです。 名探偵、 開始五分で逮捕。 母が言いました。 「推理ごっこはいいけど、  次はみんなの分、買ってきてね」 父が言いました。 「できれば、四つ入りで」 妹が言いました。 「今度は隠さなくていいよ」 ぼくは財布を握りしめます。 本当の事件は、 ここから始まるのです。

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