紫雲 葵紫雲 葵2026-06-14 15:38

月の妖精

------------------------------------------------------------------------------------------------------------------------------------ 今夜の三日月は、まるで夜空にかけられた氷の細工のよう。 色を持たず、ただ冷ややかに、透き通った光を放っている。 ガラスの身体を持つ透明な妖精。 彼女の輪郭は、背景にある星空と同化して、目を凝らさなければ見失ってしまいそう。 心臓の代わりに胸の奥で息づいているのは、一滴の澄んだ月光だけ。 「誰も、私を見つけられない」 そう、静かに微笑むと、その声は冷たい風に混ざって、サラサラと流れていった。 彼女が羽ばたいても、音はしない。 ただ、通過した夜空の星々が、一瞬だけ万華鏡のように歪んで煌めくだけ。 彼女は、世界の誰とも交わることがない。 触れようとしても、その手は空気のようにすり抜けてしまうから。 存在しているのに、存在していない。 それは寂しくもあり、自由なことでもある。 やがて夜の終わりが近づき、朝の青い光が世界を満たし始める。 透明な妖精は、三日月とともに、光の境界線へと溶けていった。 まるで、最初からそこに何もなかったかのように。 ただ、世界が一瞬だけ、いつもより澄んで見えた気がする。 ------------------------------------------------------------------------------------------------------------------------------------ アドリブ、アレンジ大歓迎です。 よろしくお願いします。

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#朗読

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