題名『人形送り~神婚~(にんぎょうおくり~しんこん~)』 神に嫁(か)す。その為だけに育てられたヒトの話。 少しでもお気に召して頂けたならば、重畳で御座います。 ※アレンジ・アドリブ大歓迎です。 以下、本文。 •*¨*•.•*¨*•.¸¸ 《出逢イ》 【壱人称】か?【壱人称】は……、人形送りの人形だが……、【弐人称】は、誰……だ? ……いつからここに居るか? 生まれた時からだ。とは言っても、さすがに赤子の頃の記憶は無いがな。 ……他を知らんから分からん。何せ、ここから出たことが無いのでな。ここが【壱人称】の全てだ。 ……〝ジユウ〟? それはどんなものだ? ……ほお。ならば無いな。 【壱人称】の意思で求めて、【壱人称】の手元に残して良いモノや、【壱人称】〔専用/だけ〕のモノは無かった。 ……気に入ったモノを、こっそりと隠し愛でたことが有ったが、気付かれて、……処分させられた。 きっと、何ぞ都合の悪いことがあったのだろう。 ……“トモ〝? “ユウジン〟? とは? ……え、【弐人称】は……いいのか? 【壱人称】は、【弐人称】と……友になりたいと求めても、いい……のか? 【壱人称】は、【弐人称】を処分したくない。 【壱人称】は……、【壱人称】は……、どうしたらいい? 【壱人称】は、【弐人称】とは違う。 〝ギムキョウイク〟とやらも受けていない。 人間として不出来だ。出来損ないだ。 【弐人称】を望める立場に、【壱人称】はない。 そもそも【壱人称】は、……ああそうか。コレか。こういうことか。 今、ようやく分かった。 ……おそらくあの時、【壱人称】を育てた者達が、【壱人称】にさせた行為は、【壱人称】自身が〔生贄/人柱/人身御供〕として育てられたと知った時、【壱人称】が〔生を望む可能性を/厄介事を〕、少しでも減らすためだったのだ……。 となると……、しまった。弱みが出来てしまった。 これは【弐人称】を人質に取られたら、彼奴等(あやつら)の言う事を聞かざるを得んな。 【弐人称】の為でなければ死ねんとは、裏を返せば、【弐人称】の為なら死ねるということだからな。 ……いや、もう手遅れだ。 ……想像してしまったんだ。 ……【弐人称】が先に死んだとか、【弐人称】が生涯の伴侶を見つけて、【壱人称】の許を離れたら、という想像だ。 ……【弐人称】が【壱人称】の側に居ないのならば、【壱人称】など、生きていても無意味だと……、そう思ってしまった……。 こんな考えに到ることすら、【壱人称】には、許されていないのに……、到ってしまった……。 だから【壱人称】は……、もう、駄目なのだ……。 神に嫁(か)すモノは、空っぽな人形でなければならないのに……、〔意思を持って/人間になって〕しまった。 ……今はひたすら、【壱人称】に生きていて欲しい……と、そればっかりだ……。 《別レノ時》 彼奴等(あやつら)が言っていたが、人生など、一炊(いっすい)の夢なのだろう?【弐人称】のお陰で、最後にとても良い夢を見ることが出来た。 【壱人称】を人間にしてくれて、本当に有難う。一時(いっとき)だけでも、幸せだった……。 さよなら、我が友よ。達者で暮らせよ。 いつでも、見守っているからな……。 •*¨*•.•*¨*•.¸¸ 本文は以上です。ご覧頂き、誠に有難う御座いました。皆様からのご投稿及びご感想を、心よりお待ち申し上げております。 🐥作者の独り言✒ 義務教育は受けていないが、ある程度の意思の疎通は出来ないと養育する側にとっても不都合が多いので、最低限の教養(体の不調、天気、四季、衣類の着脱等)は教えた。自分達側に不都合なことは徹底的に排除。多分、捨て子か拾い子か、死んだ妊婦から生まれた子。頭脳明晰で本人は知らないが超美形。
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