題名『狐者異(こわい)』 『狐者異(こわい)』は、『怖い』の語源になったとされる、日本の妖怪です。 少しでもお楽しみ頂けたのならば、恐悦至極に存じます。 ※アレンジ・アドリブ大歓迎です。 以下、本文。 **¨*•.¸¸⋆***¨*•.¸¸⋆***¨*•.¸¸⋆* 異:【二人称】にはもう、他者(たしゃ)を愛する心はないのですか? 人:……たとえ【一人称】に、まだそんな心があったとして、【一人称】に愛された方は、いい迷惑だろうヨ。 異:さぁて、どうでしょうかね? それ以前に、迷惑かどうかを決めるのは、【一人称】や【二人称】ではなく、思われたお相手でしょう。 人:そりゃあ、そうだがヨォ……。 異:賭けてみてもいいと思うんですがねぇ。案外、イイ目が出るかも知れませんよ。 人:ハッ! 《嘲笑》……どうだか。 異:何かを賭けなければ、何も得られはしない。賭博師(ばくちうち)だった【二人称】なら、篤(とく)とご存じでしょう。 人:……【二人称】、一体(いってぇ)何を企(たくら)んでいやがる? 異:企(たくら)むだなんて滅相(めっそう)もない。【一人称】はただ、【二人称】に幸せになって頂きたいだけですよ。 人:気味(きび)の悪ィこと言うんじゃねェよ。恐怖の化身(けしん)と称されるモンが、いつから宗旨替(しゅうしが)えしたんでェ? 異:いいえ。宗旨替(しゅうしが)えなどしておりませんよ。 人:ほー? なら、どういう了見(りょうけん)なんでェ? 異:誰かが幸せになれば、必ずそれを妬(ねた)んだり、怨んだり、呪ったりする者が出て参ります。人間(ひと)というものは、集団になると気が大きくなり、何をしでかすか分かりませんから、おそらくは、もっと大きな不幸を生み出してくれることでしょう。その負の感情こそが、【一人称】の餌です。 人:なぁる。『他人(ひと)の不幸は蜜の味』ってやつか。 異:ご名答。『人間(ひと)の不幸』ほど、甘美なものはありませんよ。まぁもっとも、どれほど喰らっても、満腹になる事は無いのですけれどもね~。 人:はー。そりゃ、業(ごう)の深(ふけ)ェこって。 異:《微笑》何を仰(おっしゃ)いますやら。【一人称】などは、まだ可愛いものですよ? なにせ人間(ひと)は、それに気が付きませんから。どれほど他者(たしゃ)を呪い、不幸に陥(おとしい)れようと、自身が「心底満足だ」「幸せだ」と思わぬ限り、決して満たされることはない、とね。 人:……確かに、人間(にんげん)の方が異形(いなり)モンより、余程(よっぽど)業(ごう)が深ェわナァ。 異:ええ。この大八洲(おおやしま)に八百万(やおよろず)在(ましま)す神より、地獄に在(おわ)します十王(じゅうおう)より、当然、我等異形(いなり)より、強(こわ)いのは人間(ひと)ですよ。 人:《溜息》くわばらくわばら……。って、ちょっと待て……。 異:はい? 如何(いかが)致しました? 人:【二人称】、サラッと【一人称】を生き餌(いきえ)にする気だったな? 異:〔あ、バレました?/おや、バレましたか。〕 人:くっ、コノヤロウ……。いけしゃあしゃあと……。 異:気に障(さわ)ったのなら、申し訳ありません。なにせ【一人称】、これでも一端(いっぱし)の〝異形(いなり)〟ですから《笑》 人:だとしても、少しは悪びやがれ! 異:え?『人間(ひと)に在(あ)らざるモノ』。つまり、『人で無し(ひとでなし)』である【一人称】には、非常に似つかわしい態度かと存じますが? 人:……ああ。間違いねェ。 **¨*•.¸¸⋆***¨*•.¸¸⋆***¨*•.¸¸⋆* 本文は以上です。ご覧頂き、誠に有難う御座いました。皆様からのご投稿及びご感想を、心よりお待ち申し上げております。
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