朗読台本「ヒラエス」

登場人物：ぼく（先輩） 形式：一人語り／朗読用台本 --------------------------------------- 夕暮れの駅のホームで 風が頬を撫でた瞬間、 胸の奥にかすかな震えが走った。 何度目か分からないデジャブ··· ぼくは、また 君の気配を追ってしまう。 振り返っても、そこにはただ 少し冷たい空気と、 遠くへ流れる人波だけがある。 君の存在は、 ぼくにとってダーザインそのものだった。 言葉を超えた何かが 確かに息づいているのに、 指先では決して届かない距離。 暮れゆく空に滲むオレンジが、 ぼくの記憶をやわらかく照らす。 淡く、そして静かに その光の中で、 ぼくは立ち尽くしている。 --------------------------------------