蜂乃巣ゆん蜂乃巣ゆん2026-05-26 15:14

アクション。

SE:早朝の撮影現場。 SE:照明機材の駆動音。 SE:誰かの「おはようございます」。 SE:バタつくスタッフの足音。 スタッフ:病室セット、先に押さえます! スタッフ2:香盤ちょい押してます! 監督:巻けるところ巻くぞー! 主人公(独白):久しぶりの現場だった。役者として。ただ、それだけなのに。心臓が、少しうるさい。怖かった。もし。もう二度と。あの頃みたいに。芝居が楽しくなかったら。 主人公(独白):期待するのが、怖かった。 少女:おはようございます。 主人公:…… 少女:顔、固いですね。 主人公:うるさい。 少女:緊張してます? 主人公:してない。 少女:してますね。 主人公:してないって。 少女:してますって。 (少し間) 少女(笑う):よかった。 主人公:何がだ。 少女:ちゃんと怖がってる。 主人公:…… 少女:本気の人って、そういう顔します。 主人公(独白):敵わないなと思った。昔から。こういうやつが。一番、呼吸を乱す。 恋敵役:あれ?先輩、今日入るんすか。 主人公:……悪いか。 恋敵役:いや。なんか意外。 少女:えー、先輩めっちゃ上手いんですよ。 主人公:やめろ。 恋敵役:へぇ。じゃあ今日、負けないように頑張ろ。 (肩を軽く叩く) 主人公(独白):その距離感。やっぱり苦手だ。自然に笑って。自然に肩を叩いて。当たり前みたいに近い。……演技だ。そう思った。思ったのに。 少女:先輩。 主人公:なんだ。 少女(笑う):今、ちょっとムカつきました? 主人公:……演技だ。 少女:へぇ。 主人公(独白):たぶん。少しだけ。図星だった。 スタッフ:スタンバイお願いしまーす! スタッフ2:病室シーン、本番いきます! (少し静寂) 主人公(独白):深呼吸。大丈夫。芝居は、キャッチボール。いや。ケンカだ。 親友(記憶):予定調和が、一番つまんねぇ。 主人公(独白):……分かってる。 監督:本番いきます! SE:カチンコ。 主人公(独白):シーンは、病室。少女は、余命宣告を受けた恋人。俺は、それを支える男。 監督:3。 主人公(独白):始まる。 監督:2。 主人公(独白):世界が、息を呑む。 監督:1。 監督:――アクション! (少し静寂) 少女(役・涙混じり):私がいなくなっても。ちゃんと、生きてね。 主人公(役):……そんなの、無理だ。 少女(役):嘘。 (少し静寂) 主人公(独白):違う。 こんな台詞、 台本にない。 少女(役):あなた、また一人になる。 主人公(独白):アドリブ。 こいつ。 やりやがった。 少女(役):だって。 失うのが怖い人って。 誰も。 ちゃんと好きになれないから。 (沈黙) 主人公(独白):来た。 こいつ。 また。 投げてきた。 主人公(役):……そんなことくらい、分かってる。 (少し間) 主人公(役・苦笑):……だからもう。 誰も大切にしないって決めた。。 (少し静寂) 監督:――カット!! (静寂) 主人公(独白):その言葉で、世界が終わる。病室が。ただのスタジオになる。でも。今度は、少し違った。 少女:先輩。 主人公:…… 少女(笑う):ちゃんとケンカ、できましたね。 主人公:……お前。せめて流れは打ち合わせさせろ。 少女:言いましたよ?喧嘩するって。 主人公:コイツ…… 少女:で、どうですか?戻ってきて 主人公:まぁ…悪くはない。 (少し間) 主人公(独白):久しぶりだった。誰かとの芝居が。少し怖くて。少し、楽しかった。 スタッフ:次シーンいきます! 監督:スタンバイ! 主人公(独白):深呼吸。今度は。少しだけ。楽しみだった。 監督:3。 照明が灯る。 監督:2。 世界が、息を呑む。 監督:1。 主人公(小さく):……もう一回。 監督:――アクション!

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#声劇#ゆんの台本#声劇

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