昇る

・記念すべき(笑)お題１作目。 状況もかなりわかりやすいかと。よろしければ、皆様の命をふきこんでみてください。 以下、本文です。 －－－－－－－－－－－－－－ こんなにも暗闇に沈んでいくのに、心は澄みきっていた。 抱きしめた重さに抗うことなく、深く深く、底へ。 世間ではきっと、身分違いの恋がどうだのと、下卑た噂であふれかえることだろう。 知ったことか。後悔などない。 嗚呼、美しい。 あれは月光か。なんと美しい。 月が。昇っていく。はるか遠くへ。昇っていく。 そうか。役目を終えた魂は、あの月にたどり着くに違いない。美しく、穢れを知らぬあそこへ。 自由の効く右腕をゆっくり伸ばした。まだ小さく見えるその月の輪郭に、そっと触れた。 おまえと同じ、優しく、柔らかい。 そんな感触がした。 －終－