朗読台本：『不言色（いわぬいろ）』

************************************* 柔らかな黄色が、 言葉にならない想いを 照らしていく。 “クチナシ” どこか心を閉ざしたように 思えるけれど、 香りは嘘をつかない。 甘く澄んだ香りが風に乗り、 花言葉が、私の耳にそっと囁く。 「とても幸せです」 言葉を使わず香りだけで 心を満たしてくれる クチナシの花。 それなのに 世の中には怖い噂もあるという。 「死人に口なし」 言葉の影が、 花そのものを曇らせていた。 けれど、 本当のクチナシは、 声より確かな喜びの色を 持っている。 もしも想いが声にならなくても、 この不言色(いわぬいろ)は、 きっと届く。 幸せを運ぶ風にのせて、 何も言わずに、やさしく確かに。 *******************************************