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お題詳細

であぱ(actor's off)であぱ(actor's off)2025-09-02 05:24

彼岸花

【説明】 ただ『お腹が痛くなってトイレに行った』というだけの内容です。 ************* 丑三つ、両の眼がふと開く。 夢と現の狭間の中で、囁き聞こえる、誰ぞの声か。 虚ろ映る見慣れた木目、目が合い、睡魔が手を招く。 暗い水底(みなそこ)沈み行く。揺らりゆらゆら埋まり行く。 鉛の目蓋(まぶた)が目路(もくろ)を覆う。揺らりユラユラ塞ぎ行く。 ──鈍(ドン)!! 突如と襲う苛烈(かれつ)な激痛。 腹を喰い、破るが如くの蟲の叫喚(きょうかん)。 いつぞや睡魔は手を振り失せて、残るは憫(あわれ)む木目の泪(なみだ)。 臓物(ぞうもつ)逆巻く蟲の声。義理りギリギリ這い回る。 苦悶を追い討ち焼き尽くす。義理りギリギリ喰い散らす。 蟬(せみ)の抜殻さながらに、空蝉(うつせみ)布団を抜け出すと、柱に小趾(こし)を叩き付け、されど鈍痛誤魔化し切かず、駆けるは厠(かわや)へ伸びる道。 如何(いか)に襲うか腹の蟲。 脳裏に浮かんだ夕餉(ゆうげ)の赤身。己の間抜けさ呪いをかけて、駆けるは厠(かわや)へ伸びる道。 ──鈍(ドン)!! 行先目先(ゆくさきめさき)に捻(ねじ)れる腑(はらわた)。門を叩くが蟲の爪。未(ま)だだ未(ま)だだと溢(こぼ)れる吐息。 届くが先か開くが先か、門は唸(うね)り軋(きし)みゆく。未だだ未だだと吐息が漏れる。 手を振る像が霧の影。此処(ここ)は何処ぞと目を擦り、晴れる目下(もっか)に花畑。 「おいでおいで」と亡者の誘い。 「未だ未だ」と祖母の聲(こえ)。 花を游(およ)ぐは小舟が壱棺(いっかん)。 「乗るか乗らぬか此岸(しがん)の者よ」 「逝くか逝かぬか彼岸(ひがん)の者と」 「おいでおいで」と亡者の誘い。 「未だ未だ」と祖母の聲(こえ)。 ──巌(ガン)!! 劈(つんざ)く鐘の音(ね)腹に打つ。手に触れ気付く、凍える地底(じぞこ)。 這(は)って進むか百足(むかで)の如く。這って進むか亡者の如く。 開くが先か逝くが先。せめても着いての開き逝き。終えてを望むが彼岸花。 逝くが先か開くが先。目先に届くが厠の把手(とって)。終える旅路の悲願話(ひがんばな)。

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#朗読#コメディ#シリアス##厨二病漢字

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