題名『明日は我が身と、知りもせず』 ※アレンジ・アドリブ大歓迎です。 以下、本文。 ―― 『百舌(もず)の速贄(はやにえ)』というのをご存じだろうか。 ネズミなどの小動物を、杜松(ねず)という鋭いトゲのある樹の枝や、 有刺鉄線などに突き刺し、殺してしまうのだ。 ネズミたちがいくら嫌がろうとも、どれほど許しを乞おうとも、 モズは、ネズミたちを捕まえて、杜松(ねず)の樹へと刺してしまう。 ネズミは何も悪くない。 ネズミはなんにも悪くない。 モズには何も悪いことをしていない。 壁や柱をかじったり、人間が蓄えたお米を食べてしまっても、 米櫃(こめびつ)の中に糞(ふん)をしてしまっても、 それはネズミだから、そういう風に生まれついてしまったのだから、仕様がない。 生きるために、ほんのちょっと、他人様(ひとさま)のお宅を齧(かじ)っただけ。 生きるために、ほんのちょっと、他人様の食べ物を頂いただけ。 生きるために、ほんのちょっと、他人様の家の納屋(なや)で子供を産んだだけ。 それでもモズは、ネズミたちを捕まえて、杜松(ねず)の樹へと刺してしまう。 刺して、啄(ついば)んで、殺してしまう。 他のネズミはそれを見て、おそれ、おののき、震えている。 ネズミは何も悪くない。 ネズミはなんにも悪くない。 モズには何も悪いことをしていない。 一羽のモズが、ネズミたちのその様子を見て嗤(わら)っていた。 おかしくて、おかしくて、堪らなくなり、他のモズにその話をした。 翌日、そのモズは杜松(ねず)の樹に刺さっていた。 仲間だと思っていたモズに銜(くわえ)えられ、 杜松(ねず)の樹へと刺されるその瞬間(とき)、モズはようやく気が付いた。 「ああ……、自分もネズミだったのだ……」 他の多くのモズはそれを見て、ああなるまいと思ったが、 それを見ても、何も感じない、無関心なモズもいた。 他人事(ひとごと)のように、嘲笑(せせらわら)っているモズもいた。 明日(あす)は我が身と、知りもせず……。 ――― 本文は以上です。ご覧頂き、誠に有難う御座いました。 🐥作者の独り言✒ 元ネタは、SNSや何やらの炎上だったりします。
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