題名:『不完全変態『ニンゲン』なんです。』 不完全変態(ふかんぜんへんたい):昆虫の変態の一型。サナギの時期を経過せず、幼虫から直ちに成虫になるもの。バッタ・カゲロウ・トンボ・シラミ・セミなどの類に見られる。 某サイトにも載せていたものを蔵出ししました。 一人、舞台で、1つだけスポットライトをつけて、心情を吐露しているような、そんなイメージで書きました。 暗い内容ですが、少しでもお気に召して頂けたら幸いに存じます。 ※アレンジ・アドリブ大歓迎です。 以下、本文。 ✽.。.:*・゚ 【一人称】の思う正解が、【二人称】にとっては不正解で、 【一人称】にとっての正解は、【二人称】からしたら不正解。 なんて生きにくいトコロだろうか。 世界は、先人たちが決めた正解で出来ている。 法律や標識(ひょうしき)、文字の書き順に音程、当然とされる常識。 それに合うように育つことを望まれ、はみ出し者は劣等(れっとう)の烙印(らくいん)を押される。 義務教育(ぎむきょういく)、高等教育(こうとうきょういく)。 私服や制服、たまに体操服を毎日毎日脱皮(だっぴ)のように脱ぎ着して、社会に出て求められるのは即戦力の人材。 サナギの時期なんてありゃしない。 しかも、やっと社会に出られたと思ったら、7日足らずの短い命? そんなの聞いてない。 そんなの、全然聞いてない。 不完全なんです。 【一人称】は、きっと。 否(いや)、絶対。 不完全変態(ふかんぜんへんたい)『ニンゲン』なんです。 不器用(ぶきよう)で、不勉強(ふべんきょう)で、不作法(ぶさほう)ながら、毎日必死に毎日を生きているんです。 不条理(ふじょうり)で、不平等(ふびょうどう)で、不安定(ふあんてい)な世界を、這(は)いずり回って生きているんです。 【一人称】の視界と【二人称】の視界が違うように、 【二人称】の正解も、【一人称】のそれとは違うトコロがあるんです。 合わせられるように努力はしますが、歩み寄るって言葉をご存知ですか? 喉元(のどもと)まで出かかる言葉を必死に飲み込み、当たり障(さわ)りのない態度と返事でやり過ごす。 言葉を足せば、自分の考えをより分かり易く伝えられるかもしれない。 けれど、長ければ長くなるほど、真意(しんい)はぼやけ、無意味になったりもする。 一致するはずのない他人の視界・思考を受け入れ、共有する? そんなの出来るわけがない。 そんなの、絶対出来やしない。 不完全なんです。 【一人称】は、きっと。 否(いや)、絶対。 不完全変態(ふかんぜんへんたい)『ニンゲン』なんです。 【一人称】は、不出来(ふでき)で、不格好(ぶかっこう)で、不覚仁(ふかくじん)だから、 【二人称】よりもっと、不随意(ふずいい)で、不自由(ふじゆう)で、不如意(ふにょい)な世界を生きているんです。 それでも、どれだけ無様(ぶざま)な生き様をさらすことになろうとも、 自分自身とは、不可侵(ふかしん)で、不可説(ふかせつ)で、不可得(ふかとく)な存在であることを、 不可解(ふかかい)で、不思議(ふしぎ)で、不確実(ふかくじつ)なこの世界で、証明し続けていかなければならないんです。 もがいて、あがいて、肉が削(けず)れて、骨が見えたとしても、 不親切(ふしんせつ)で、不可逆(ふかぎゃく)で、不整合(ふせいごう)なこの場所で、 不統一(ふとういつ)で、不可量(ふかりょう)で、不透明(ふとうめい)な【一人称】自身を、 他の誰かにとって、 【一人称】にとって、 自分自身が、 不可欠(ふかけつ)な存在だと、 完全に思える、 その日が来るまで。 ✽.。.:*・゚ 本文は以上です。ご覧頂き、誠に有難う御座いました。皆様からのご投稿及びご感想を、心よりお待ち申し上げております。 また、細心の注意を払ってはおりますが、誤字脱字などが有りましたら、是非、台本のコメントにてお知らせ頂ければと存じます。ご協力のほど、どうぞ宜しくお願い致します。 とかくこの世は生きづらいから、ぶきっちょなりに、一生付き合う自分自身の愛し方を、学んでいかねばならないのだ。
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