蜂乃巣ゆん蜂乃巣ゆん2026-05-27 15:02

世界を救った、その代償。

SE:ニュース速報。ヘリの音。遠くのサイレン。 ナレーション:街が壊れる音を、 人は案外すぐに忘れる。 崩れたビルも、 焼けた道路も 数ヶ月も経てば「そんな事もあったね」と語られる。 けれど。 そこで暮らしていた人間の時間だけは、 壊れたまま止まる。 SE:インタビュー音声が重なる。 女性①(疲れた声) 「助けられた事には感謝しています。でも、家がなくなりました。これからどう暮らしていいのか……」 男性①(苛立ち) 「たまたま、出張で行っただけなのに命を落とすなんて、どうしてあの人は助けてくれなかったんでしょう?」 男性②(怒り) 「スーパーヒーローだなんて言うけど、好き勝手暴れてる。根本解決まで立ち会わないで、何がヒーローだ!」 SE:テレビの音量が下がる。 静寂。 主人公(独白):……全部、見た。 見なければいいのに。 見れば傷つくと分かっているのに。   今日もまた、 指は勝手に画面を滑っていく。   『被害総額、過去最大』 『ヒーロー活動の是非』 『救われた命の裏側』 『本当に正義なのか?』 主人公:ヒーロー。 そんなものになりたかった訳じゃない。 ただ。 目の前で誰かが死ぬのが、 嫌だっただけだ。 SE:遠い爆発音の記憶。 主人公:あの日だってそうだ。空が裂けた。 名前も知らない化け物が現れて。 逃げ惑う人の中で。   泣いている子供がいて。 崩れそうな高架の下に、 立ち尽くす老人がいて。 誰かがやらなきゃと思った。 いや。 違う、…たぶん。 “俺しかいなかった”。 それだけだ。 間。 主人公:でも。 ——救えなかった。 SE:ニュース音声がフラッシュバックのように差し込まれる。 「どうして、あの人は助からなかったんですか?」 「感謝してます。でも、人生が壊れたんです」 「あなたが来なければ——」 主人公(少し掠れた声)……あぁ。            分かってる。 分かってるんだ。 俺が壊したものも、 ちゃんとある。 怪物だけ殴って、 全部解決なんて。 そんな都合のいい話じゃない。 SE:スマホ通知。 主人公、読む。 『次の災害発生』 『現地避難、間に合わず』 主人公(小さく笑う)……行くしかないか。 SE:椅子が引かれる音。 主人公:誰にも頼まれてない。 感謝もされない。 それでも。 ——あの日、見捨てられなかった人間は、 たぶん今日も、見捨てられない。 SE:風音。

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#朗読#朗読劇#ゆんの台本

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