掛け合い台本「街―同じ景色―」

登場人物：ぼく（先輩）／おれ（後輩くん） 形式：掛け合い/朗読用台本 好きなアーティストさまの 曲名をタイトルとして 違うシチュエーションで 作成しました。 ------------------------------------------------------------------- （先輩・後輩くん） 泣き出しそうな空の下で ふたり並んで歩いていた。 （先輩） ビルの隙間からこぼれる光が まるで息みたいに揺れている。 季節がひとつ変わるたびに この街の匂いも音も 少しずつ変わっていく。 （後輩くん） 街の音が少し遠くに聞こえて ふたりだけが別の時間を 生きているみたいだった。 手が触れそうで 触れない距離。 でもそれでいいと思えた。 先輩が隣にいる。 それだけで胸の奥が 静かに満たされていく。 （後輩くん） おれが歩くたびに かすかに響く足音を 先輩が追いかけてくる気配がする。 （先輩） それなのに君の歩幅だけはずっと変わらない。 （後輩くん） 振り返ると照れたように笑う顔。 その笑みは この街のどんな灯りよりも あたたかかった。 （先輩） ぼくが遅れても 振り返って微笑んでくれる。 そんなことが どうしようもなく愛しい。 （先輩・後輩くん） 風が流れを変えた交差点で 人の波がゆっくりと止まっていく。 （先輩） ぼくもつられるように足を緩めた。 （後輩くん） おれも歩みを緩め隣を見た。 （先輩） そのとき 風が君の髪を揺らした。 その横顔がどうしようもなく綺麗で 胸の奥で名前を呼ぶ声が震えた。 （後輩くん） 先輩の横顔は 泣き出しそうな空よりもやさしくて 思わず息をするのを忘れた。 （先輩） 手の甲がそっと触れる。 （先輩・後輩くん） 言葉はいらない。 この瞬間 この静かなざわめきの中で 確かにふたりは ここにいる。 （先輩・後輩くん） 空が泣く前に このぬくもりを覚えておきたい。 ふたりで 同じ景色を見ている。 それだけで 世界が優しくなる気がした。 ------------------------------------------------------------- ※参考:先輩目線 「街」 https://coemee.com/topics/kkD2bHWf8icJNsVTVGqVU ※参考:後輩くん目線 「街―another―」 https://coemee.com/topics/Y60wm0fLaOPVC_gXeqtYg --------------------------------------------------------------