題名『鉢植えに記す証』 以前、某サイトに載せていた作品です。 少しでもお気に召して頂けたら幸いに存じます。 ※アレンジ・アドリブ大歓迎です。 以下、本文。 🪴*.。.:*・゚.◌ もう少しで、【一人称】という存在は、 この世から永遠に消えて無くなってしまう。 だから【二人称】に、 鉢植(はちう)えを遺(のこ)そう。 【一人称】が、この世に、確かに居たことを証明する為に、 【二人称】に、鉢植えを遺そう。 【二人称】が、独(ひと)りで泣かなくて済むように、 【二人称】に、鉢植えを遺そう。 鉢には、何を植えようか。 木はダメだ。 木は、何百年と生きるが、あとあと問題が生じる。 花がいい。 では、何の花にしようか。 鉢の、色や形はどうしようか。 花は、青い色が美しい、勿忘草(わすれなぐさ)にしよう。 鉢は、シンプルな無地の、茶色い陶器製にしよう。 園芸用のラベルも買って、【一人称】の名前と、 植えた年月日を書いて、鉢に刺しておこう。 勿忘草(わすれなぐさ)の花言葉は、『私を忘れないで』だそうだ。 祈るようなその言葉は、少し、呪いに似ている気がした。 芽が出て、花が咲いて、枯れて、種が落ちて、また芽吹く。 〔繰り返される/巡(めぐ)り巡(めぐ)る〕、花のサイクルの中に、在りし日の【一人称】の姿を思い出してくれたなら、 それだけで……、ただただ、それだけで、 間違いなく【一人称】は、幸せだから……。 『鉢植(はちう)えに記(しる)す証(あかし)』 【二人称】が【一人称】を忘れる日が、いつかきっと来ることでしょう。 それは【二人称】に、【一人称】よりも大切な、何かが出来たという証。 本音を言えば、寂(さび)しいけれど、 【二人称】にその日が来ることを、心から願っています。 🪴*.。.:*・゚.◌ 本文は以上です。ご覧頂き、誠に有難う御座いました。皆様からのご投稿及びご感想を、心よりお待ち申し上げております。
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