マルタマルタ2026-08-06 11:44

泣かない娘

別のサイトであげていた話です。 アレンジOKです! 生まれた時から、一度も泣いたことのない娘。 転んでも、怖い映画を見ても、結婚式でも――泣かない。 そんな娘を心配しながらも、笑顔を見守り続けた母。 これは、泣かない娘と、そんな娘を見守り続けた母の切なくも温かい話。 ーーーーーーーーーーーーーーーーー 「赤ちゃんが産まれましたよ…… あれ? 泣きませんね。」   普通の赤ちゃんなら、外の世界に初めて出た時、声を上げて泣くだろう。 しかし、私の娘は全く泣かなくて、何か体に異常があるのじゃないかと先生を困らせていた。 私もとても心配した。   最後に先生が、 「大丈夫でした。 とてつもなく肝が据わっているだけです。」 と言ったときは、腰抜かすかと思ったわ。   そこからも、娘は全く泣かなかった。   小さい頃、頭から転んじゃったときも、立ち上がって何事もなかったのかのように立ち去っていった。   テレビで怖いのを見た時も、少しビクッとはしたものの泣くことはなかった。   ちなみに怒られて泣いたこともない…… というより、怒られたことがない。 この子、完璧なのだ。   言われたことは守るし、大体なんでもできる。 鈍くさい旦那とポンコツな私の間に生まれたとは思えないくらいしっかりしている。   いつもポーカーフェイスで何でもこなしてしまう娘―― こんな感じで、娘が泣いたところを私は一度たりとも見たことはない。   だから、「絶対泣ける」と言う映画をレンタルショップで借りて見せたこともある。   見終わって、顔を梅干しぐらいクシャクシャにして泣く私の横で、 スンとした顔の娘が、 「面白かった、ありがとう。」 と立ち去っていった。   ここまで泣かないとは……。   泣かれるところを見られたくなくて、影でこっそり泣いているのではないか。 涙腺に関する病気を患っているのではないか。 心配になってきた。   数年後に娘は結婚した。   いよいよ泣くのではないかと思ったが、泣いたのは私と旦那で、娘は泣かなかった。   しかし、幸せそうな笑みを浮かべていた。   その時から私は、娘の涙を詮索しなくなった。   そうだ。 泣かなくったって、この子が幸せでいてくれたらそれでいいのだ。   今までだって、泣きはしなかったが、娘はたくさんの幸せな顔を見せてくれた。   この子の笑顔が見られたら、それでいい。   娘が結婚し、私は穏やかな日々を過ごしていた。 そんなある日――   私は買い物の帰り道、突然意識が朦朧として…… 気づいたら病院にいた。   しばらく検査が続いて、医者が沈んだ顔で戻ってきた。   検査結果は、「悪性腫瘍 ステージ4」   医者に半年の余命宣告をされた。   たくさん泣いた。   もっと生きたかった。 もっと生きて、旦那、娘…… もっと家族と一緒に過ごしたかったな。   はじめは絶望で立ち直れないかと思ってたけど、たくさんの人がお見舞いに来てくれた。   旦那なんか、私よりも泣いて、   「死ぬのは私だっちゅーの。」   ……そういうところが、あなたの好きなところだけどね。   あぁ、私、幸せだったな。   多分、もうすぐ私は死ぬだろう。 自分でわかる。 だって、私の身体だもの。   あれ? 誰かが私の手を握っている。   「……ぁ……さん、お母さん。」   娘の声だ。   私は声にならないほどの小さな声を振り絞っていう。   「……私にたくさんの幸せを見せてくれて…… ありがとう。 幸せになっ……てね。」   その時、 私の手に冷たい何かが落ちてきた。   娘の涙だった。   大粒の雫が、私の手に何回も落ちてくる。   ……私、こんなにも愛されていたんだな。   ……泣かない子で、心配したけど、 あなたは世界一優しい子なんだよね。   あー、 ほんとうにいい人生だったなぁ。   娘よ。   「……大好きだよ」

77
#朗読#切ない#朗読#あったかい

回答一覧0

まだ回答がありません

最初の回答者になってみませんか?