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幻太郎@Phantom🖊幻太郎@Phantom🖊2025-08-30 23:59

朗読台本「最後の花火」

登場人物:ぼく(先輩) 形式:一人語り/朗読用台本 --------------------------------------- ぼくが彼に最後に渡したのは、 たったひとつの飴玉だった。 花火大会の帰り道、人混みを避けて、 河原の土手に座った。 彼は、どこか寂しそうに笑って、 「来年も、一緒に見れるかな」なんて言った。 …その時、言えなかったんだ。 「好きだよ」って。 それを言ったら、今の関係が壊れそうで。 先輩と後輩、それだけの距離が、 やけに心地よくて怖かった。 ポケットに入っていた飴玉を、 そっと彼の手に握らせた。 「また来年も、一緒に見よう」って、それだけ。 彼は、ちょっと驚いた顔をして笑った。 …でも次の夏、彼はもう隣にはいなかった。 遠くから聴こえる花火の音。 甘くて、少しだけ苦いあの飴玉の味が、 今も舌の奥に残っている。 ----------------------------------------

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#朗読

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