題名『窮極のバッド・エンドを、君に。』 年齢は一応、30半ば~50代くらいのイメージです。 少しでもお気に召して頂けたら幸いに存じます。 ※アレンジ・アドリブ大歓迎です。 以下、本文。 **¨*•.¸¸⋆** 細い首だ、と思った。 指をさらにくい込ませると、薄い皮膚の下に流れる血管の脈動も、空気を求める気管のわななきも、つぶさに知ることができた。 今、【一人称】に殺されかかっているこの体は、必死に生(せい)を求めている。 だが、持ち主たるこの少女の目は、全く死を恐れていない。 それどころか、この部屋に闖入(ちんにゅう)して来た【一人称】を見ても、悲鳴一つあげやしなかった。 「……チッ、やめた」 【一人称】が手の力を緩(ゆる)めると、少女は糸の切れた操(あやつ)り人形のように、床に崩(くず)れ落ちた。 「おい、受身くれぇとれ。まだ生きてんだから、頭打ったらちゃんと痛ぇぞ?」 つい5秒前まで、自分のことを殺そうとしていた【一人称】の言葉に、少女は目を丸くした。 【一人称】は殺し屋だ。 雇(やと)われりゃ老若男女、どんなポジションの人間でも、容赦(ようしゃ)なく殺して来た。 今日の、たった10秒前までは。 “【一人称】を殺さないのか……?”と、か細い声で少女が訊(き)いてきた。 やっぱり声も体も震えちゃいねぇ。 短くひとこと「ああ」と答えてやる。 少女を殺すよう依頼してきたのは、少女の叔父(おじ)と名乗る人物だった。 おおかた少女の両親が遺(のこ)した、莫大(ばくだい)な遺産目当てだろう。 少女の父母と2人の兄は、1ヵ月前に死んだ。 不慮(ふりょ)の事故として片づけられたそうだが、少女殺しの依頼が来たということは、多分そういうことなのだろう。 叔父(おじ)の子供が男だったなら、少女と結婚させたり、もっと他にも方法が……いや、これは【一人称】の仕事の域を超えた話だな……。 さて、どうしたもんか……。 一度ためらうと情が移って、もう二度と殺せなくなるんだよなぁ~……。 だが、今回の仕事の報酬(ほうしゅう)は、前金でたんまりと頂いてしまっているし……。 「う~ん……。あ……髪、切らせてもらっていいか?【二人称】を始末したという証拠を提示しろと言われていてな。 そうだ。ついでだから、【二人称】と分からないようにしてしまおう。 【二人称】、髪を切り終わったら、男の子に変装しろ。なるべく身分の低そうなヤツにな。 “なんで、【一人称】を殺さないの?”だぁ? ハンッ!最初(はなっ)から『死んでるヤツ』殺しても、全然面白くねぇんだよ。 おら、とっとと鏡の前に座れ。こう見えて、普段は散髪屋だからな。腕は確かだぞ? ヒュ~♪さすが、お嬢様。髪の先までお上品ですこと。 ……また、髪が最低ここまで伸びるまで、生かしてやるよ。 ……いや、違うな。今の無し。 ……【一人称】はなぁ、生(せい)に必死にしがみついて、生きようと無様に足掻(あが)いてるヤツを殺すのが好きなんだ。 そういうヤツを、バッド・エンドに突き落としてやるのが、三度の飯より大好きなんだよ。 だが、今の【二人称】を殺しても、【一人称】は楽しくねぇどころか、そもそも【二人称】自体に殺す価値を見出せねぇ。 だから、【二人称】に似合(にあい)のバッド・エンドが見つかるまで、【二人称】は誰にも殺させやしねぇ。 いいか? 【二人称】を殺すのは、【一人称】だ。 【一人称】以外のヤツに、殺されんじゃねぇぞ? 分かったか? 分かったら返事をしやがれ。 生きながらに死んでんじゃねぇよ、バーカ。 【二人称】が心底“生きたい”と思った時、【一人称】がこの手で殺してやる。 それまでは、どうしたって生かしてやるからな。 覚悟しろよ?」 **¨*•.¸¸⋆** 本文は以上です。 以下、おまけ。 **¨*•.¸¸⋆** ①「(いつか必ず、)【二人称】に似合(にあい)のバッド・エンドを、【一人称】がこの手でお見舞いしてやる。せいぜい楽しみに待っていろ」 ②「誰が殺してやるか。相変わらず【二人称】は、【一人称】のターゲットのままだ。勝手に殺されるのも、勝手に死ぬのも禁止な?」 ③「生まれてこの方、一度も本気で生きたいと思ったことねぇヤツが、いっちょ前に死のうとしてんじゃねぇ!! そんな悪い子には、足の裏コチョコチョの刑だ!!おらおらおらおら~」 ④「ハァッハァッ、生きてたか……。ハァッ、良かったぁ~……。全速力で……ハァ、走って来たかいが……ハァ、あったわ……」 ⑤「ほぉ、イイ反応するじゃねぇか。お望み通り串刺しにしてやるよ。かば焼きのタレたっぷりつけてなぁ!ハッハッハーッ!!」 **¨*•.¸¸⋆** 台本は以上です。ご覧頂き、誠に有難う御座いました。皆様からのご投稿及びご感想を、心よりお待ち申し上げております。 おまけ一つから投稿OKです。お気軽にお使い下さい。
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