城生 悠正城生 悠正2026-10-04 09:45

声劇台本『執事とお嬢様~繭哉と小夜の場合~第1話「繭哉と小夜」』

雨霧(あまぎり)家に仕えることになった執事の結城繭哉(ゆうきまゆなり) 仕事で家にいない両親に寂しさを募らせている雨霧小夜(あまぎりさや)は、執事として雨霧家に来た繭哉に時折両親の影を重ねた。 繭哉と小夜が巻き起こす日常劇。 甘くむずがゆい二人の関係をお楽しみください。 ・登場人物(※性別の変換はしないでください。) 執事 結城 繭哉(ゆうき まゆなり) 男性 21歳 一ノ瀬紹介所から派遣された執事。 お嬢様のことを心から心配し、寄り添う。 鈍感。 自身のことよりお嬢様のことが第一。それには理由があり…。 お嬢様 雨霧 小夜(あまぎり さや) 女性 18歳 竹を割ったようなとても真っ直ぐな性格。 思ったことは直ぐに口に出るので隠し事が下手。 仕事柄、家にいない両親に寂しさを募らせているがその素振りは両親には一切見せない。 年が近い繭哉に兄のような親近感を持ちながら両親の影も重ねている。 ・所要時間10~15分 以下台本です。 ------------------------------------------- 0:(SEドアを優しくノックする音) 小夜:はーい、どうぞー。 0:(SEドアが優しく開く音) 繭哉:お嬢様、まだ起きていらっしゃったのですか? 小夜:うーん、そうなの。 小夜:なかなか寝付けなくて…。 繭哉:*明日《あす》も学校でしょう? 繭哉:早く就寝しませんと、お身体に*堪《こた》えますよ? 小夜:そうは言われてもなー…。 小夜:あ!じゃあ明日の朝ごはん、久し振りに*繭哉《まゆなり》の焼いてくれたフレンチトーストが食べたいな! 繭哉:ええ、かしこまりました。 繭哉:恐らく、材料も足りていたので調理は可能かと思います。 小夜:やった。 小夜:ありがとう*繭哉《まゆなり》ッ。 繭哉:いえ、とんでもないことでございますよ。 繭哉:…でも、お嬢様?その様な事を考えていたら、気分が*高揚《こうよう》して目が冴えてしまわれませんか? 小夜:ううん。 小夜:早く寝ればそれだけ早く*繭哉《まゆなり》のフレンチトーストを食べられる! 小夜:って考えたらきっと寝られるわ。 繭哉:(微笑)ええ、ではゆっくりとお休み下さいませ。 繭哉:それでは*私《わたくし》は失礼させていただきますね。 0:(*繭哉《まゆなり》、*踵《きびす》を返して部屋を出ようとする。) 小夜:あ!*繭哉《まゆなり》? 繭哉:どうされましたか、お嬢様? 小夜:…えっと、ね。 小夜:頼みたいことというか…。 小夜:ちょっとした、お願いというかー…、があってね? 繭哉:はあ…。 繭哉:どう、なさいましたか? 小夜:…えっとね 小夜:(ごにょごにょ)…てくれないかな? 繭哉:え、と…。 繭哉:申し訳ございませんお嬢様。 繭哉:『えっとね』の*後《あと》が、その…聞き取れませんでして。 繭哉:もう一度おっしゃっていただけますか? 小夜;(焦る) 小夜:えッ? 小夜:もう一度? 小夜:もう一度って、もう一回ってこと? 繭哉:ええ。 繭哉:出来ればお願いしたく存じます…。 小夜:…イヤ。 繭哉:(困惑) 繭哉:え?『イヤ』…と? 繭哉:でも、*私《わたくし》に何かお願いがあるのでは? 小夜:だって…。 小夜:恥ずかしいし…。 小夜:もう一回なんて、ムリ…。 繭哉:あー…。 繭哉:もしお嬢様が『ムリ』とおっしゃるのであれば、決して*無理強《むりじ》いはしませんが…。 繭哉:*私《わたくし》には何でもお申し付けいただいてもよいのですよ? 小夜:うー…๑ 繭哉:お嬢様? 小夜:なっ、なに? 繭哉:*僭越《せんえつ》ながら、本音を少しだけ*吐露《とろ》する機会をいただけませんでしょうか? 小夜:えッ…。 小夜:…いいよ。言ってみて? 繭哉:ありがとうございます。 繭哉:*私《わたくし》は、お嬢様とは少なからず信頼関係を築けている。と*自負《じふ》しております。 繭哉:そんな信頼を置いているお嬢様のお願いを叶えてあげられないのは…。 繭哉:*一執事《いちしつじ》として淋しく思いますし、それに…。 小夜:それに? 繭哉:*一個人《いちこじん》、*結城《ゆうき》*繭哉《まゆなり》としても、ちょっと淋しいかな? 小夜:ッ!…*繭哉《まゆなり》。 小夜:ありがと。 繭哉:いえいえ。 繭哉:*私《わたくし》には、もったいないお言葉です。 小夜:…聞いて、くれるかな? 繭哉:ええ、勿論ですよ。 繭哉:して、いかがなさいましたか、*小夜《さや》お嬢様? 小夜:(やっぱり照れながら) 小夜:あの、ね…。 小夜:私が寝るまでッ…ってッ、手っ、手を繋いでて、くれないかなっ…て。 繭哉:ん?…手を、ですか? 小夜:…そう。 小夜:(深呼吸)前に私が風邪を引いちゃったときみたいに、さ。 繭哉:お嬢、さま…。 小夜:…ダメ、かな? 繭哉:あー、いえいえ! 繭哉:もっと『とんでもないこと』をお願いされるかと思い身構えておりましたので、少々*呆気《あっけ》に取られてしまいまして…。 小夜:何よそれ! 小夜:私からしたら熱もないのにこんな事言うの、『とんでもある』ことなんだから! 繭哉:(微笑)すみません、お嬢様。 0:(*繭哉《まゆなり》、*小夜《さや》の隣に座り手袋を外し手を差し出す。) 小夜:あッ…。 繭哉:どうぞ、お嬢様。 繭哉:*私《わたくし》の手でよければ、いくらでも差し出させていただきます。 0:(*小夜《さや》、*繭哉《まゆなり》の手を握る。) 小夜:うわッ。 小夜:*繭哉《まゆなり》の手、あったかい。 繭哉:お気に召していただけたのならば幸いです。 繭哉:…どうです、眠れそうですか? 小夜:うん。 小夜:なんでだろうね? 小夜:こうしてると、とっても落ち着くな。 繭哉:…お嬢様。 小夜:ねえ*繭哉《まゆなり》? 繭哉:いかがなさいましたか? 小夜:今度は、私の話も、少し聞いてもらえるかな? 繭哉:もちろんですよ、お嬢様。 繭哉:中庭にアリたちが巣を作った話でも、学校であった小さな失敗でもなんでもお聞きいたします。 小夜:フフッ、ありがと。 小夜:(軽い呼吸) 小夜:私ね、この広い家にいつも一人だと思ってた。 小夜:そこに執事として*繭哉《まゆなり》が来てさ。 小夜:最初は『どんな人かな~?』って不安もあったけど、年も近くて話しやすくて…。 繭哉:今だから…あ、いや…こんな状況ですので*白状《はくじょう》してしまいますが、 繭哉:*雨霧家《あまぎりけ》に初めてお*伺《うかが》いしたあの日、*私《わたくし》も緊張していたのですよ? 小夜:えー、そんな感じしなかったよー? 小夜:でもさ、パパもママもお仕事でほとんど家にいないし、さ。 小夜:私いつも*繭哉《まゆなり》にわがままばっかり押し付けて…。 繭哉:(微笑)それを言うことで少しでもお嬢様の寂しさが*紛《まぎ》れているのであれば、どれだけでも『わがまま』をお申し付け下さい。 繭哉:それが*私《わたくし》がここにお*仕《つか》えしている理由ですし、どんな『わがまま』でも全力で受け止めますので。 小夜:(笑い)ありがとね、*繭哉《まゆなり》。 小夜:(だんだん眠い感じに) 小夜:私一人っ子だから兄妹ってどんなか分からないけど、*繭哉《まゆなり》のことお兄ちゃんみたいに思ってるの。 繭哉:ほう…。 繭哉:お兄ちゃん…ですか? 小夜:うん。 小夜:(以後、あくびなど織り交ぜながら。) 小夜:お兄ちゃんでもあるし、私のこと娘みたいに可愛がってくれるパパやママみたいな存在。 小夜:すっごく頼りに(してるんだからね) 小夜:(眠りに落ちる) 0:(しばしの間) 繭哉:(小声で) 繭哉:お嬢様?…お嬢様? 繭哉:(微笑)眠られたか。 小夜:すぅすぅ…。 繭哉:(微笑) 繭哉:俺の可愛い*小夜《さや》お嬢様…。 0:(*繭哉《まゆなり》、*小夜《さや》の手を握り直して手の甲にキスをする。) 小夜:う…ん。まゆ…なり…。 繭哉:ッ!お嬢様ッ!起きていらっしゃっ…。 繭哉:あ、いや…。寝て、る…か? 小夜:す…き。 繭哉:えッ!? 繭哉:*小夜《さや》………おじょう…さ 小夜:やき…えへへ。 繭哉:んなッ! 繭哉:そんな思わせぶりな寝言…。 繭哉:まあ、お嬢様らしいっちゃそうだけど…。 小夜:ほら…*繭哉《まゆなり》にも、お肉…むにゃむにゃ。 繭哉:(呆れ笑い)ありがとうございますお嬢様。 繭哉:*明日《あした》の夜は、すき焼きにしないとかなー…? 0:(*繭哉《まゆなり》、立ち上がりドアに向かって歩き始める。) 繭哉:あー、ネギ買ってこなきゃだなー…。 0:(*繭哉《まゆなり》、ドアの前で振り返る。) 繭哉:おやすみなさいませお嬢様。 繭哉:良い夢をご覧になってくださいね。 繭哉:では、失礼致します。 0:(*繭哉《まゆなり》、部屋を後にする。) : : : 小夜:(胸中) 小夜:びっっっくりしたぁ〜! 小夜:*繭哉《まゆなり》、急にキスするんだもん! 小夜:(胸中) 小夜:…でも、悪い気は、しない…かな? 0:(*小夜《さや》、身体を起こし誰もいないドアの方を見る。) 小夜:いつも私のことを一番に考えてくれて、ありがとね*繭哉《まゆなり》。 小夜:おやすみ。 0:(キスをされた左手の甲を右手の親指でさする。) 小夜:(ボソッと)…いつか、ちゃんと言えるのかな?

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