優奈:昇?…昇なの? 昇:『優奈…?僕の声が…聴こえた、の? 昇:…いや、今は聴こえて、いない?』 0:(SE鞄が地面に落ちる音。) 優奈:ッ!…これは。 優奈:キミが使ってた…私の鞄? 昇:『えっ?なんで僕の鞄が? 昇:…あれ?でも、シルバーレオンのアクセサリーが取れてる?』 0:(昇、鞄が落ちてきた先を見上げる。) 昇:『あ!電柱にアクセサリーだけ引っ掛かって…。 昇:…電車の風圧で、鞄だけ落ちた…のか?』 優奈:あれ?鞄から、何かはみ出てる…。 0:(優奈、鞄に近づく。) 優奈:(ハッとして) 優奈:これはっ!? 優奈:…指輪と。…手紙? 0:(優奈、手紙を開く。) 昇:(優奈が読む手紙、昇の声で。) 昇:優奈?今まで言えなくてごめんね…。 昇:優奈がやきもきしてるの、分かってた。 昇:僕は、結婚した先のことを考えると、不安で仕方なくて…。 昇:経済面だったり、子供のこと…だったり。 昇:だから、その話題になると、いつも話を逸らしてた。 0:(優奈、手紙をめくり次の手紙を読む) 昇:(優奈が読む手紙、昇の声で。) 昇:でも、きちんと貯蓄も出来て、この指輪を買った時に、僕の気持は固まったんだ。 昇:この指輪を渡すときに、ちゃーんと、僕の気持も伝えようと思ってさ。 昇:結婚しよう優奈。 昇:これからもずっと、君の側にいたいんだ。 優奈:(泣きながら) 優奈:昇ぅ…。のぼるぅ…。 優奈:…もう、キミの声は、聴こえないの? 優奈:もう一回…キミの声が聴きたいよ!! 優奈:(泣き崩れる) 昇:優奈ッ、誰よりも優奈のことを愛してる。 昇:結婚しよう!! 優奈:ッ!昇ッ! 優奈:聴こえる!…聴こえたよ! 0:(昇、そっと優奈に寄り添いながら。) 昇:…泣かないで、優奈? 昇:ごめんね。 昇:遅くなっちゃったけど…。 昇:やっと…。やっと言えた! 優奈:のぼる…。 昇:…優奈、僕は君がこの世界からいなくなることなんて、これっぽっちも望んでないんだよ? 優奈:何で? 優奈:私は、キミのいない世界に生きている意味なんて無い! 昇:ゆっくり思い返してごらん? 昇:優奈のことを好きな人が、君の周りに…。 昇:いや、僕の周りにもいっぱい、いたんだよ? 0:(一呼吸おいて) 昇:優奈は、みんな僕のことを慕ってくれてるって言ってたけど、 昇:そうじゃない。違うんだ…。 優奈:何も違わないよ! 優奈:みんな、君のことを慕って、楽しそうに笑って…。 昇:(涙ぐみながら) 昇:バカだなぁ優奈…。 昇:みんなが楽しそうに笑ってるのは、優奈がいつも笑ってるからだよ? 昇:笑顔の輪の中心にいたのは、僕じゃなくて…紛れもなく君の方だよ優奈? 昇:その笑顔に、みんな引き寄せられるんだ!…僕だってそのうちの一人なんだよ? 優奈:えっ!? 昇:そんな、優奈のことを思ってくれている人たちにさ…。 昇:今の君と、同じ思いを、させたいかい? 昇:優奈は、人の気持ちを痛いほど分かってあげられる優しい子だよね? 0:(一呼吸おいて) 昇:だから、僕は優奈はそんな浅はかな考えで、命を絶たないって信じてる! 優奈:ッ! 優奈:…うん。…分かったよ。昇…。 優奈:私、もう、変なこと考えないから! 昇:うん。 昇:それでこそ、僕の愛した優奈だ。 昇:…確かに、僕はもう、この世界の人間じゃないし優奈の笑顔の横にいられない。 優奈:…昇。 昇:それは変えられない事実なんだ。 昇:…いつもはさ、僕がバスから優奈のこと見送ってたけど、 昇:今度は、優奈に見送ってもらうことになっちゃったね…。 昇:…皮肉だよね。 優奈:いやだよ!私、見送るなんて出来ないよ!! 昇:(深呼吸) 昇:ごめんね、優奈。 昇:もう、時間が無いみたいなんだ…。 優奈:嫌!待って昇! 昇:…優奈、聞いて? 昇:僕はね、君の何事にも物怖じせず、どんな時でも前を向ける強さ、ひた向きさが大好きだったんだ! 昇:だから、笑って優奈。君が悲しむことが、僕や周りの人たちの不幸なんだよ? 昇:だから『前を向いて優奈。それが…』 優奈:昇?声が遠くなっていってるよ? 優奈:ねえ、『昇ってば!!』 昇:『ああ、どんどん優奈の声が遠くなっていく。 昇:…そうか。僕が留まっていた理由はこれだったんだね。 昇:優奈にちゃんと想いが伝えられなかったから…。 昇:(ため息)その言葉を生きている時に言えない甲斐性なしだった僕を…許してね。』 優奈:昇ッ!! 優奈:最後にもう一度だけ、声を聴かせてよッ!! 昇:優奈…。 優奈:ッ!昇ッ! 昇:優奈、僕は君のことを愛してた。 昇:ううん。たとえ生まれ変わっても、愛してるよ。 昇:…さよなら、優奈。 優奈:昇…。 優奈:うん。…キミの気持ち、ちゃんと受け取ったよ。 優奈:ありがとうね、昇…。 0:(SEシルバーレオンのアクセサリーが落ちる音) 優奈:ッ! 優奈:…シルバーレオンの…。キミの、アクセサリー…。 0:(優奈アクセサリーを両手で大事そうに握りしめ胸元へと抱き寄せる。) 優奈:昇…。愛してたよ! 優奈:ううん。これからも、ずっと愛してる!! : : : : 優奈:『ねえ、キミは知ってるかな? 優奈:キミが助けた妊婦さん、無事に出産したんだよ? 優奈:元気な男の子で、名前はキミの「*昇《のぼる》」の漢字を充てて「*昇《しょう》」なんだって! 優奈:少し、時間はかかるかもしれないけど…。 優奈:私、ちゃんと前を向いて生きていこうと思うの。 優奈:それが、キミの愛した優奈。…私だもんね。 優奈:きっと…。ううん。絶対にキミの分まで幸せになるよ! 優奈:さようなら、昇。 優奈:…そして、ありがとう。』
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